会議の最中、誰も頼んでいないのにチャット欄にAIが書き込む。「本日の議題です」「残り10分になりました」「決まったことをまとめました」——静かに、しかし参加者全員の目の前で動く存在として。
AIが会議室に入ってきた——個人の道具との違い
これまでのCopilot(コパイロット)は「自分の画面の中だけ」で完結する道具だった。Microsoftが提供するこのAI機能は、メールの下書きや長い資料の要約を手伝ってくれる——便利ではあるが、結果は使った本人にしか届かない。隣の席の人には関係ない話だ。
Team Copilotは違う。会議のチャットや参加者全員が見る共有メモに直接書き込む。「誰が何をやるか」を会話から読み取ってタスクに変え、途中から入ってきた人には自動で経緯をまとめて渡す。議題の進行から時間管理まで、これまで誰かが地味にこなしていた会議の段取り仕事を、全員の目の前で透明にこなす。「個人の助手」から「会議室に座るチームの一員」へ——これが今回の変化の本質だ。
Team CopilotはMicrosoftが2024年5月に発表し、Microsoft 365 Copilotの契約者向けにプレビュー提供を経て展開を進めている機能だ。利用するにあたって追加費用は発生しない。Microsoftの2026年度第3四半期決算発表によれば、Microsoft 365 Copilotの有料利用は2,000万件を超えた。1年前と比べて大幅に増えた数字で、5万席以上を一度に導入する大企業の数は前年比4倍になっている。AIを使った働き方への移行が、個人の試みから組織全体の判断に変わってきた兆しだ。
「チームの一員として動く」と言われても、まだ実感が湧かないかもしれない。では実際の会議で、AIは何をしているのか。
会議中にAIがやること
会議が始まると、Team Copilotは招待状に書かれたアジェンダ(議題リスト)を読み取り、チャットに自動で投稿する。「えーと、今日の議題は……」と誰かが探す時間はもう要らない。
議事録・時間管理・会議後のドラフト作成
話し合いの内容はリアルタイムでLoopページ(参加者全員が同時に見て書き込める共有メモ)にまとまっていく。メモ係を誰かに押しつけなくていい。議題ごとに時間が押してきたら参加者に通知が来る。タイムキーパー役も不要になる。会議の終わりには、まだ結論が出ていない議題をAIが拾い上げ、「これ、決まっていません」とリマインドする。
欠席メンバーへの自動通知
遅れて会議に入ってきた人が「@Copilot ここまでの内容を教えて」と話しかけると、その人だけに要約が届く。進行中の議論を遮らず、遅刻者も流れに乗れる。これまで「ちょっと今どこまで話した?」と誰かをつついていた場面が、静かに消える。
会議後はプロジェクトマネージャーに変わる
会議が終わった後も、AIの仕事は続く。むしろここからが本番だ。
タスクの自動作成と割り当て
会議中の「鈴木さん、来週末までに見積もりをまとめてもらえますか」——この一言から、AIは担当者・作業内容・締切の3つを読み取り、タスクとして自動で登録する。人間が後でメモを見返してToDoリストに転記する手間が消える。ただ、タスクを「決めた」のは人間なのか、AIが会話を解釈して決めたのか——その境界線は少し曖昧になる。
締切が決まると、AIはそこから逆算してスケジュールを組む。「3日前に下書き完成、前日に確認」という段取りを自動で引く。「いつ何をすればいいか」を考える作業そのものを肩代わりする形だ。
全アプリでリアルタイム同期
会議から生まれたタスクは、チームが日常的に使うMicrosoft Planner(仕事の割り当てを管理するアプリ)にリアルタイムで反映される。「会議で決まったはずなのに、誰もToDoに入れていなかった」という見落としが起きにくくなる。
ここまで聞くと、次に気になるのは「では、いくらかかるのか」だろう。
料金と今後の予定
「Copilot for Microsoft 365」の標準価格は1ユーザーあたり月額30ドル(約4,500円)だ。中小企業向けには18〜21ドル(約2,700〜3,100円)のプランも用意されている。Team Copilotの機能はこのライセンスに含まれる——会議室でAIが動くようになっても、追加でお金を払う必要はない。
「AIがチームの一員として会議に参加する」という世界は、すでに値段がついて動き始めている。それが自分たちの会議室に必要かどうか——判断するのは、結局のところ人間だ。

