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「ネット不要でAIが動く」新型PC——マイクロソフトが新カテゴリー、出荷台数340%増

「ネット不要でAIが動く」新型PC——マイクロソフトが新カテゴリー、出荷台数340%増
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AIの処理をクラウドではなくPC本体で行う——そんな設計のパソコンが、企業の現場に急速に広がっている。

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マイクロソフトが新カテゴリーのPCを発表、出荷台数は前年比340%増

マイクロソフトが2024年に定義した「Copilot+ PC(コパイロットプラス・ピーシー)」は、AI処理専用のチップを内蔵したPCの新しい区分だ。クラウドに情報を送らなくても、本体だけでAIの機能を動かせることが、この認定を受ける条件の核心にある。

この新カテゴリーの出荷台数は、調査会社Canalysのデータによると、2026年第1四半期に前年同期比340%増の1,200万台に達した。急拡大の背景には追い風がある。マイクロソフトの基本ソフト「Windows 10」が2025年10月にサポートを終了し、法人PCの大規模な買い替え需要が重なったのだ。2025年の国内PC出荷台数は前年比43.8%増の1,095万台と、5年ぶりに1,000万台を突破した。「選ばれた」だけでなく、「タイミングが来た」側面もある。

普通のPCと何が違うのか、何ができるようになるか

ChatGPTはネット経由でクラウドのサーバーが動いている。Copilot+ PCは、その処理をPC本体の中で完結させる。

AI処理をPC内部でやる——クラウドに情報を送らない仕組み

これまでのAI機能は「クラウド」——インターネットの向こうにある別会社のサーバー——に情報を送って処理していた。会社の機密書類をよその会社のコピー機に持っていくようなものだ。Copilot+ PCは、内蔵のNPUで処理を完結させるため、情報がネットの外に出ない。機密情報の漏洩リスクが下がり、通信が不安定な環境や電波の届かない現場でもAIが動く。

会議の音声をリアルタイム字幕に——オフラインで動く2つの機能

「ライブキャプション」はその象徴だ。PCから出る会議や動画の音声を、ネット接続なしでリアルタイムに日本語字幕へ変換する。画像生成も同様で、テキストで内容を指示するだけで約1秒で画像を作り出せる。クラウドに頼る通常のAIサービスでは数秒から数十秒かかる処理だ。バッテリーは20〜30時間以上持続する。
「情報が外に出ない」「オフラインでも動く」——企業が導入を決めた理由は、先進技術への興味より、この2点の実用性にある。

ドコモ・トヨタが大規模導入を決めた理由

3社に共通する順序がある。AIのソフトを先に入れた——そうしたら、今使っているPCが追いつかなくなった。PC側を刷新したのは、それが原因だ。

ドコモ2.7万人、導入1ヶ月で月10時間の時短

NTTドコモグループは従業員4万人以上にMicrosoft 365 Copilot(マイクロソフトが提供するAI業務支援ツール)を展開し、あわせてCopilot+ PCの配備を進めた。2026年3月末時点で、1人当たり月10時間以上の業務削減を達成している。対象規模は約2万6,700人。削減が顕著だったのは会議後の作業だ——議事録の作成や社内向けのメール要約といった定型業務が、AIの自動化で大幅に圧縮された。月10時間は、1年で換算すると1人あたり120時間以上になる計算だ。

トヨタグループ800台、デザインや会議要約に活用

トヨタ自動車と電通グループの合弁会社、トヨタ・コニック・プロは約800台を導入した。直接の引き金は、Copilotを使い始めてから起きた動作の遅延だった。旧来のPCではTeams(テレビ会議ソフト)が頻繁に不安定になり、会議そのものに支障が出た。PC側を刷新することで、広告制作の内製化やデータ分析を安定して動かせるようになった。

産経新聞2,000台、記者業務のAI前提化

産経新聞社も同じ構図をたどっている。記者・編集業務にAIを前提として組み込む方針を決め、約2,000台を入れ替えた。業種はバラバラだが、3社とも「AIを使うためにPCを買い替えた」という順序は変わらない。

企業導入が加速する一方で、マイクロソフトが最大の売りにしていた機能には別の問題が持ち上がっている。

目玉機能「リコール」に浮上した誤算

「過去の作業をAIが記憶する」機能の仕組み

「リコール(Recall)」は、PC上での操作をAIが継続的に記録し、過去の作業内容をあとから検索できる機能だ。「先週見たあの資料、どこに保存したっけ」——そんな場面でキーワードを入力するだけで当時の画面ごと引き出せる。マイクロソフトがCopilot+ PCの中核として発表した。

ところが発表直後、批判が殺到した。「PCの画面を常時撮影して記録するのは、監視と同じではないか」。使用者がどのサイトを見て、何を入力したかがすべてAIに蓄積される。指摘はやまず、マイクロソフトは発売直前に機能を引っ込めるという異例の対応を迫られた。

有効化率10%未満——脆弱性指摘でプライバシー懸念が再燃

問題はそこで終わらなかった。2026年3月、複数のセキュリティ研究者がリコールの保護機能をすり抜けて操作ログを外部に取り出せることを実証し、セキュリティ専門メディア「Wired」などで広く報じられた。マイクロソフトは機能の根本的な見直しを迫られ、関連機能の名称変更や設計の再構築を進めている。

リコールは現在もデフォルトで無効だ。使いたい場合は自分で有効にする必要があり(オプトイン)、実際にそうしたユーザーは10%未満にとどまる。本人確認に使う「Windows Hello」(顔認証・指紋認証)を通じた追加のセキュリティ対策も施されたが、信頼の回復には至っていない。Copilot+ PCの出荷台数は340%増を記録した。だが、その看板機能は大半のユーザーに使われていないまま今日がある。

この状況は企業の姿勢にも表れている。MM総研が2025年に国内企業を対象に実施した調査では、Copilot+ PCを「知っている」企業は73%に達する一方、AI機能を「重要視している」企業は33%にとどまる。ハードは普及した。AIへの信頼は、まだ追いついていない。

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