Googleが最新AIを発表した翌日、月1,980円で使えるAIサービスがもう最新モデルに切り替わっていた。個人事業主でも手が届く値段のまま、変わったのは中身だけだ。
Googleが発表した翌日、月1,980円で使えるに
I/O発表翌日の即対応
5月19日から20日にかけて、Googleは年に一度の大規模発表会「Google I/O(グーグル・アイオー)」で最新AIモデル「Gemini 3.5 Flash(ジェミニ・スリーポイントファイブ・フラッシュ)」を公開した。その翌5月21日、NTTドコモの出資を受けたスタートアップSUPERNOVA(スーパーノーヴァ、東京都渋谷区)は法人向けAIサービス「Stella AI for Biz」への搭載を完了した。
AIの新モデルは、発表から実際に使えるようになるまで数か月かかるのが業界の慣例だ。翌日での対応は異例の速さである。それだけAIサービスをめぐる競争が激しくなっているということでもある。
価格はそのまま、モデルだけ最新に
利用者が払う料金は変わらない。月1,980円という価格はそのままに、裏側のAIエンジンだけが最新に入れ替わった。ユーザーは何も手続きせず、気づけばもう新しいモデルを使っている状態だ。
「速くて賢い」——Gemini 3.5 Flashが変えたこと
Googleの発表によると、Gemini 3.5 Flashが返答を返すスピードは競合他社の最新AIの4倍とされている。待ち時間が減ると、人はAIをもっと気軽に使うようになる——「ちょっと聞いてみるか」という場面が増える。
ただし、AIには「速くすると賢さが落ちる」という一般的な傾向がある。処理を急がせると正確さが犠牲になるからだ。Gemini 3.5 Flashはそのトレードオフを破ったとGoogleは主張する。Googleが公開したベンチマーク(性能評価)データでは、複雑な分析タスクでの正確さが前のモデルの62%から74%へ向上したとされている。満点を100とすれば、60点台から70点台へ上がったイメージだ。速さと賢さが、同時に改善された形だ。
もう一つ変わったことがある。グラフや表が入った資料をそのまま渡して読み取れるようになった。これまで人間がデータを手で打ち直してからAIに渡す必要があった作業が、資料ごと丸ごと渡せるようになる。
中小企業の事務で、具体的に何が変わるか
Googleが公表した事例によると、会計・経費管理の現場では、取引先の確認や書類の整理に数週間かかっていた手作業が数分に短縮されたケースがある。また、製造業の中小企業では、ベテラン担当者が1件40〜60分かけていた見積もり作成が15分程度になった事例も報告されている。
請求書の処理も変化している。手書きや複雑な書式の書類でも自動でデータ化できるケースが増え、担当者が手入力する量が減ったとGoogleは説明している。
本1冊分を一発で読み込む
これまでのAIは、長い文書を渡すと途中で読み切れなかった。Gemini 3.5 Flashは約10万字——本1冊ぶん——のPDFや仕様書を一度に読み込み、「重要な点は何か」と聞けばまとめて答えが返ってくる。
GmailやスプレッドシートでそのままAIを使える
GoogleのメールサービスGmailや、表計算ソフトのGoogle Spreadsheetsと連携している。「このメールの返信を書いて」「このデータをグラフにして」と話しかけるだけで下書きやグラフが出来上がる。専門知識は要らない。
月2,000円のAI環境——かつては大企業だけのものだった
最新のAIを業務に使うために、かつては専任のエンジニアと高額なシステム投資が必要だった。中小企業や個人事業主には縁遠い話だった。
それが今は、月1,980円で最新モデルが自動的に使える状態になっている。Stella AI for BizはOpenAIの「GPT-5(ジーピーティーファイブ)」やAnthropic社の「Claude(クロード)」など複数社のAIをひとつの画面で扱える設計を先に整えていたため、Googleのモデルが更新されると翌日には差し替わる。利用者が何もしなくても、道具は勝手に最新になる。
それでも、国内中小企業のAI導入率はまだ25%にとどまる。道具は届いたが、使っている企業はまだ4社に1社だ。
道具は揃った。残る問いは「どのAIを選ぶか」ではなく、「どう日常の仕事に組み込むか」だ——その答えを出すのは、これからの話だ。

