Googleが2026年5月19日、年次開発者会議「Google I/O」でAndroidスマートフォンの大幅な刷新を発表した。変化の核心は一言で言える——スマホが「自分でタスクをこなす」ようになる。今回の発表はスマホだけにとどまらず、パソコンと眼鏡にも同じ変化が及ぶ。3つまとめて読んでおく価値はある。
スマホが自分でタスクをこなすOSに
アプリをまたいで自律的に動く
Android 17に「Gemini Intelligence(ジェミニ インテリジェンス)」が組み込まれた。GeminiはGoogleのAI(人工知能)で、ユーザーの代わりに複数のアプリをまたいでタスクをこなす機能だ。
旅行会社Expedia(エクスペディア)との連携デモが象徴的だった。「6人分のツアーを探して」と一声かけるだけで、AIがGmailの旅行メールを読み取り、Expediaで条件に合うプランを検索し、予約まで完了させる。人間がタップしたのは最後の「承認」ボタン一回だけだ。授業のシラバスから必要な教科書を見つけてショッピングカートに追加する操作も、同様に自動でこなせる。
Googleはこの機能を、SamsungのGalaxy Sシリーズ最新フラグシップとGoogle製「Pixel」の最新モデルに先行展開すると発表した。動作にはRAM(メモリ)12GB以上が必要だ。RAMとはスマホが同時に処理できる作業量のことで、12GBは2025年以降に発売された中価格帯以上のスマホであればおおむね満たせる水準だが、数年前の機種や低価格帯では対象外になる可能性がある。Android 17へのアップデートは2026年夏以降に順次配信される予定だと、GoogleのAndroid担当シニアVPサンディープ・アーヤルが発表の場で説明した。今すぐ全員が使えるわけではない。
話し言葉が自動で整った文章になる
文字入力アプリ「Gboard」に「Rambler(ランブラー)」機能が加わった。音声入力時の「えー」「あのー」といった言い淀みをAIが自動で除去し、整った文章に変換する。詐欺電話をリアルタイムで検知・自動切断するセキュリティ機能もAndroid 17に実装された。派手さはないが、毎日使う場面で確実に助かる変化だ。
ChromebookとAndroidが合体した新PC
スマホで起きたAI化の波は、パソコンにも押し寄せた。
2つのOSが統合した背景と発売時期
Googleにはもともと、パソコン向けのOS(基本ソフト)「ChromeOS(クロームOS)」があり、これを搭載したパソコンを「Chromebook(クロームブック)」と呼んでいた。スマホには別の基本ソフト「Android(アンドロイド)」が使われてきた。長年、この2つは別々に存在していた。
今回、その2つがついに統合された。新しいパソコンのカテゴリ「Googlebook(グーグルブック)」の誕生だ。搭載するOSの名前は「Aluminium OS(アルミニウムOS)」——金属を思わせる名前だが、Googleは命名の理由を公表していない。
最大の変化は、スマホで使っているアプリがそのままパソコン上で動くようになること。「Quick Access(クイックアクセス)」という連携機能も加わり、パソコンの画面からスマホ内の写真やファイルをデータ転送なしで直接操作できる。スマホとパソコンの境界線が、一段と薄くなる。
発売は2026年秋。Acer・ASUS・Dell・HP・Lenovoの大手5社から順次登場する予定だ。
カーソル自体がAIになる新機能
新しいパソコン操作の目玉が「Magic Pointer(マジックポインター)」だ。
マウスのカーソルを画面上の何かに向けて小さく振るだけで、GoogleのAI「Gemini(ジェミニ)」が起動する。画像を指せば「サイズを変えますか?」、文章を指せば「要約しますか?」——カーソルが向いている対象に合わせて、次の操作をAIが自動で提案してくれる。
アプリを開いてメニューを探す、という手順が省かれる。パソコン操作の入り口そのものをAIにしてしまおう、という発想だ。この機能はAluminium OS搭載のGooglebook向けに開発されており、Googleは対応アプリや詳細なハードウェア要件について「秋の発売時に合わせて公表する」としている。
眼鏡でリアルとAIをつなぐ
スマホ、パソコンと来て、次は「画面すら要らない」世界へ——デバイスはどんどん体に近づいていく。Googleは今回、AIを搭載したスマートグラス「Android XR(アンドロイド エックスアール)」を本格発表した。ただし発売時期・価格・販売地域はいずれも現時点では未公表で、「近日中に詳細を案内する」とGoogleは説明している。
2種類の試作機の違い
Googleが示したのは2種類のグラスで、違いは一点——「レンズに画面があるかどうか」だ。
シンプルな方は音声とカメラだけを内蔵する。見た目は普通の眼鏡に近く、AIに話しかけて情報を聞いたり、目の前の景色をカメラで取り込んで翻訳させたりできる。
もう一方は、レンズの内側に透明なディスプレイが埋め込まれている。道案内の矢印が視界に浮かぶ、会話相手の言葉がその場でテキスト翻訳されて見える——そういった使い方が想定されている。さらに「どこに鍵を置いたか」をAIが覚えておいてくれる「視覚的な記憶」機能も搭載される予定だ。この技術はGoogleが「Project Astra(プロジェクト アストラ)」という名で研究を続けてきたもので、眼鏡を通じて初めて日常生活に入ってくる。日常のちょっとした困りごとを、眼鏡が静かに解決してくれるイメージだ。
| 画面なしAIグラス | ディスプレイAIグラス | |
|---|---|---|
| 外見 | 通常の眼鏡に近い | レンズ内にディスプレイ内蔵 |
| 内蔵機能 | 音声・カメラ | 透明ディスプレイ・音声・カメラ |
| 主な用途 | AIへの問いかけ・翻訳 | AR道案内・リアルタイム翻訳・視覚的記憶 |
高級ブランドと組んだ理由
Googleがパートナーとして選んだのは、テクノロジー企業だけではない。アメリカの眼鏡ブランド「Warby Parker(ウォービー・パーカー)」、韓国の「Gentle Monster(ジェントル・モンスター)」、そしてファッション大手の「Gucci(グッチ)」まで名前が並ぶ。
理由は単純だ——どれだけ高性能でも、かけたくないデザインの眼鏡は誰も使わない。スマートウォッチが普及したのも、時計として「つけてもいい」と思えるデザインになってからだった。Googleはその教訓を、最初から織り込んでいる。
技術の準備はできた。ただ、AI眼鏡をかけて街を歩く人が当たり前になるには、価格と発売時期という具体的な情報が出てからが本番だ。
検索・健康・家電も変わる
新しいデバイスだけでなく、すでに使っているサービスや機器にも変化は及んでいる。
検索結果が1枚のカードにまとまる
Googleの検索に「AI Mode(AIモード)」が加わる。青いリンクが並ぶ従来の画面ではなく、複数のページをAIがまとめた1枚のカードで表示される。自分であちこちクリックして比較する手間が省かれる。
FitbitがAI健康アドバイザーに刷新
健康管理バンド「Fitbit(フィットビット)」は、記録を見せるだけの道具から、アドバイスをくれる存在に変わる。Googleは新機能「Fitbit AI Insights(フィットビット AIインサイツ)」を発表し、蓄積した睡眠・運動・食事データをもとに原因まで提案する仕組みを示した。「昨夜よく眠れなかったのは、夕方のカフェインのせいかもしれません」——そんな一言が届く形だ。
提供スケジュールと対象モデルについて
この機能は既存のFitbitデバイスにもソフトウェアアップデートで順次提供される予定で、対象モデルや配信地域の詳細はGoogleの公式サイトで随時案内するとしている。
家の中の機器も言葉で動かせる
照明やセキュリティカメラなど、家の中の機器をAIで操作できるようになる。「リビングを少し暗くして」と話しかければ照明が動く——定型のコマンドを覚えなくても、普通の言葉でいい。この機能に対応した新しいスピーカーも登場し、価格は99ドル(約1万4000円)からとなっている。
AIは新しいデバイスだけの話ではない。すでに手元にあるモノが、静かに変わっていく。

