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GoogleのAI基盤に13兆円、企業向けAIサービスの安定化へ

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今年6月、Appleが異例の決断を公表した。自社技術へのこだわりで知られる同社が、iPhoneの新しいAI機能の根幹を、ライバルのGoogleに委ねたのだ。それほどまでに、AIを動かす「設備」の格差は開いている。

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AppleがGoogleのAIを借りた

2026年6月のWWDC(アップルの開発者向け年次イベント)でAppleが発表した「Apple Intelligence」——iPhoneに搭載される新しいAI機能群——の核心には、GoogleのAI「Gemini(ジェミニ)」が組み込まれている。高度な推論や知識を要する処理をGeminiが担い、音声アシスタントのSiriの能力を大幅に引き上げる仕組みだ。

Appleといえば、ハードウェアもソフトウェアも自社で開発することにこだわり続けてきた企業だ。競合他社のAIを主力機能の基盤に据えるのは、今回が初めてとなる。契約規模は複数の業界報道によれば年間約1,500億円、複数年にわたる大型提携だ。Appleのデバイスを通じて、GoogleのAIが世界の数十億人へ届くことになる。

この構図はAppleだけではない。ChatGPTに対抗するAI「Claude(クロード)」を開発するAnthropicも、Googleのインフラを基盤として活用する大型契約を結んでいる。自分でAIを作る企業ですら、裏側の設備はGoogleに頼らざるを得ない——そういう時代が来ている。

では、Appleすら頼るその設備に、Googleはいくら費やしているのか。答えは桁外れだった。

13兆円で電力からチップまで自前化

AIの処理量が1年で6倍になった

Alphabetが2026年に投じる設備投資の合計は1,750億〜1,850億ドル——日本円で28兆〜30兆円に達する見込みだ。同社が公表した決算資料によれば、AIの処理量は2022年と比べて約6倍に膨れ上がり、Google Cloudの売上は前年比48%増を記録している。同社は「需要が供給を上回っている」と認めており、投資を緩める理由はどこにもない。

規模感をつかむため、同業他社と並べてみる。Microsoft(マイクロソフト)は2025年度に約800億ドル(約13兆円)のデータセンター投資を公表し、Amazon(アマゾン)のクラウド部門AWSも2025年に約1,000億ドル(約16兆円)の設備投資を表明している。Alphabetの1,750億〜1,850億ドルはその双方を上回る。

データセンターから発電所まで手中に

Alphabetは2026年6月、850億ドル(約13.6兆円)の増資計画を発表した。新株の発行(公募増資)と既存株主向けの株式売り出しを組み合わせた資金調達で、一企業の単年度調達額としては史上最大規模だ。資金はデータセンターの拡張に充てられるが、電力設備の整備も含まれる。AIの計算処理は膨大な電力を消費する。GoogleはいまやIT企業でありながら、専用の発電設備まで自前で持つ必要に迫られている。

その電力で動かすチップも、Googleは自前だ。NVIDIA(エヌビディア)製GPUへの依存を避けるため、同社は独自のAI処理チップ「TPU(テンソル・プロセッシング・ユニット)」を長年開発してきた。2025年に発表された最新世代「Ironwood(アイアンウッド)」——TPU v7とも呼ばれる——は、前世代から処理性能と電力効率を引き上げた。電力インフラも、演算チップも、データセンターも自社で押さえる。その3点が揃うことで、Googleは他社が到達できない規模のAI基盤を単独で提供できる状態にある。

大手投資会社2社が出資

この増資に、著名な投資家ウォーレン・バフェット氏が長年率いてきた投資会社バークシャー・ハサウェイが100億ドル(約1.6兆円)を、公募の主要引受先として出資する。バフェット氏はすでに経営から退いており、後継体制による判断だ。加えて、運用資産規模で世界最大級の投資会社ブラックストーン(Blackstone)も出資に参加している。

資金が集まるほど、GoogleのAIインフラは他社の追随を許さないものになる。企業がAIを活用するとき、その裏側で動く設備の多くはGoogleが握っている——そういう構造が、静かに固まりつつある。

企業のAIツールはどう変わるか

この巨大な投資は、AIを使う側の企業に何をもたらすのか。

速度と安定性の向上

Googleのインフラが増強されるほど、業務にAIを組み込む際の最大の障害——「処理が遅い」「混んで応答が返ってこない」——は解消されていく方向にある。

その変化はすでに起きている。電話自動応答サービスを手がけるIVRy(アイブリー)はGoogleのAI「Gemini(ジェミニ)」に移行し、会話の文脈を正確に読み取る精度が85%から97%に跳ね上がった。イオンリテールは衣料品の商品情報登録をGeminiで半自動化し、年間4,500時間かかっていた作業を450時間——9割減——に圧縮することに成功している。インフラの拡大は、こうした恩恵をより多くの企業が受けられる方向に働く。

料金はどうなるか

Googleは現在、処理能力の高い上位モデルと、コストを抑えた軽量モデル(Gemini Flash系)の両立を進めている。高精度な処理には上位モデル、定型的な作業には軽量モデルと、用途に応じた使い分けができる選択肢は広がりつつある。

ただし、AIの裏側がGoogleに集中するほど、企業のAI利用コストや品質・継続性はGoogleの投資判断と料金設定に連動するようになる。便利さと引き換えに、依存という構図が静かに出来上がりつつある。

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