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「AIの子育て終わった」ソフトバンク、収穫フェーズ移行を正式宣言

「AIの子育て終わった」ソフトバンク、収穫フェーズ移行を正式宣言
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2026年5月11日、ソフトバンクが2025年度の決算を発表した。売上高7兆386億円(前年比約16%増)、営業利益1兆425億円(前年比約34%増)。どちらも会社創業以来の最高記録だ。

普通なら「好決算おめでとう」で終わる話だ。ところが宮川潤一社長は、発表の場でこう言った。「本当の勝負は、ここからだ」と。

過去最高の数字を出した瞬間に、なぜ「まだ始まっていない」と言うのか。

その答えは、決算の中身より「これから何を売るか」にある。ソフトバンクはこの5年間、通信会社としてではなく、AI企業として生きるための準備を続けてきた。7兆円の売上は、その準備が形になった最初の数字に過ぎない——宮川社長はそう見ている。

では、この5年間に何が起きていたのか。

目次

「AIの子育て」とは何だったのか

宮川社長は決算説明会で、この5年を「子育て期」と呼んだ。そしてこれからの5年を「成人期」と表現した。子育てが終わった——だから外に出て稼ぐ、という宣言だ。

5年間、AIに何を仕込んだのか

ソフトバンクがやったことは、シンプルだ。社員2万人全員に「自分の仕事を楽にするAIプログラムを作れ」と義務づけた。

同社によると、わずか2.5カ月で250万個のAIプログラムが社内に生まれたという。1人あたり平均125個。「会社がAIを使っている」ではなく、「社員一人ひとりが自分用のAIを山ほど持っている会社」になった。

業務効率化の成功事例は90万件に積み上がったとされる。医薬品卸大手のアルフレッサは、AIの活用だけで年間6,000時間分の作業を削減しているという。社員3人が丸1年働く時間に相当する量だ。

この数字が重要なのは「AIはすごい」という話ではない。「どの業務にAIを使えば、どれだけ得するか」という実績データが手元に揃ったということだ。それは外の企業にAIを売るとき、最も説得力ある証拠になる。

AIが「勝手に賢くなる」段階へ

「成人期」という比喩には、もう一つ意味がある。

AIは使えば使うほど、そのデータをもとに精度が上がっていく。90万件の社内実績は、そのままAIを鍛える教材になる。人間が手取り足取り教える「子育て」の段階を卒業し、AIが自分で学び続ける——それが「成人」の核心だ。

一方、日本企業でAIを業務に組み込んでいるのは、まだ全体の7%に過ぎない。孫正義会長はかつて「中国の活用率80%に対し、日本は数%と大変遅れている」と語った。ソフトバンクはこの「遅れ」を、逆にビジネスチャンスと見ている。自分たちが先に答えを出した問題の解き方を、これから日本中の企業に売る——その準備が、この5年間だった。

いよいよ「稼ぐ」段階へ——具体策と数字

社内で「効く」と確かめたAIを、今度は外の企業に売る。では、具体的に何を売ろうとしているのか。

「スターゲート」から「Crystal Intelligence」へ——世界規模の布石

AIを動かすには、想像以上に大量の計算処理が必要だ。ひとつの高度なAIが答えを出すたびに、大量のサーバーが並んだ巨大な施設が裏で動いている。この施設がなければ、AIは機能しない——いわば「AIの発電所」だ。スターゲートは、その発電所を米国に建設する構想である。ソフトバンクはOpenAI、Oracleとともに最大500億ドル(約75兆円)をかけてこれを整備する。

この米国の基盤を足掛かりに、日本市場への窓口として設立したのがOpenAIとの合弁会社「Crystal Intelligence(クリスタル・インテリジェンス)」だ。詳細はまだ発表されていないが、役割はシンプルだ——OpenAIの最先端AI技術を、ソフトバンクの営業網を通じて日本企業に届ける専門組織として機能する。「海外の最先端AIを、日本企業が使いやすい形で届ける窓口」と理解すればよい。

国産AI「更科」——海外勢に真似できない切り札

もう一つの柱が、国産AI「更科(さらしな)」だ。病院や銀行は、患者・顧客のデータを海外のサーバーに送ることができない。更科は、データをすべて日本国内で処理する設計で、6月から提供が始まる。「データを外に出さない」という約束は、海外のAI勢には物理的にできない。それがソフトバンクの切り札だ。

企業に売るのは、道具だけではない

AIを動かすには膨大な計算能力が必要になる。その計算設備——先ほどの「AIの発電所」——を丸ごと貸し出すデータセンタービジネスも、今後の収益の柱に据える。AIそのものから、それを動かす設備まで一括提供する構えだ。

社内業務ツールの外販も始まる。社内で使ってきたパワポ自動作成ツール「Satto Workspace」は今年秋に外部企業向けに提供が始まる。社内実験で「効く」と確かめてから外に出す——ソフトバンクのAI外販の一貫した流れがここにも表れている。

あなたの会社に、何が起きるか

ソフトバンクの準備は整った。では、買う側——日本の企業にとって、これは何を意味するのか。

国内でAIを業務に使っている企業は、現在全体の7%だ。残り93%の企業にとっては、これから「AIを使い始めるかどうか」を考える段階ではなく、「どこからどのAIを買うか」を選ぶ段階が来る。ソフトバンクが通信回線と同じ感覚でAIを売り始めることで、これまで「専門家がいないと無理」と二の足を踏んでいた企業にも選択肢が広がる。

ただし、AIを「持つこと」自体は差別化にならない。競合も同じツールを買えるからだ。ソフトバンクが社内の90万件の実績から学んだ答えがある——差がつくのは、何の業務にどう使うかという判断と実行力だ。国内AI市場は年18.8%のペースで成長が続く見通しだ。「AIの時代が来るかもしれない」という話は終わった。「使いこなせるかどうかが、企業の勝敗を左右する」段階が始まった——ソフトバンクの「子育て終了宣言」は、そのことを告げている。

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