アドビが、言葉を打ち込むだけで画像編集から動画制作まで自動でこなすAIアシスタントのベータ版を公開した。プロ向けデザインソフトを複数、一度の指示でまとめて動かす——アドビ製品間でこの連携が広く開放されたのは今回が初めてだ。
2026年4月27日、アドビはFirefly(ファイアフライ)AIアシスタントのパブリックベータを世界同時に公開した。Fireflyとはアドビが2023年から提供しているAI基盤で、世界で累計220億点以上の素材が生成されてきた実績がある。今回のアシスタントは、その延長線上に投入された新機能という位置づけだ。
ベータ版を試せるのは「Creative Cloud Pro」または有料のFireflyプランの契約者だ。どちらも月額課金のサービスで、ベータ期間中はAI機能を動かすための利用枠(クレジット)が毎日無料で付与される。1日あたりの付与数や正式リリース後の料金体系は、現時点でアドビから公表されていない。試してみたい場合は、アドビの公式ページで最新の条件を確認するのが確実だ。
目玉は、複数のソフトを一度の指示で動かせることだ。
1つの指示で3つのソフトを動かす
これまでのデザイン作業を想像してほしい。写真の加工はPhotoshop(フォトショップ)、ロゴやイラスト作成はIllustrator(イラストレーター)、動画編集はPremiere Pro(プレミア プロ)——やりたいことが変わるたびに別のソフトを起動し、それぞれの操作を覚え直す必要があった。3つのソフトを使いこなせる人間でなければ、最初から最後まで自分でやることはできなかった。
3ソフトが自動で連携する
Firefly AIアシスタントの核心は、その「ソフトの壁」をなくす仕組みだ。「クリエイティブエージェント」と呼ばれるこの機能が司令塔として働き、ユーザーの指示をもとにPhotoshop・Illustrator・Premiere Proを順番に自動で動かす。つまり、ユーザーがどのソフトを開くかを考える必要がなくなる。
CanvaのAI機能やMicrosoft 365 Copilotも画像・文書の自動生成に対応する。ただし、Photoshop・Illustrator・Premiere Proという専門ソフト3本を一つの指示でまたいで動かせるのは、アドビ製品群ならではの仕組みだ。他社ツールとの違いは「汎用的なコンテンツ生成」ではなく、「プロ用ソフトの操作そのものを肩代わりする」点にある。
AIが実行している各ステップはリアルタイムで画面に表示される。途中で「ここは違う」と思えば、その場で止めて修正を指示できる。AIに丸投げするのではなく、人間が確認しながら進める設計だ。
SNS画像と動画を同時に作れる
具体的にはこういうことだ。「この商品写真からSNS用の画像と15秒の動画を作って」と入力すると、各ソフトが連携して動き、2種類の素材が一度に出来上がる。これまで別々の作業として数時間かかっていた工程が、一つの指示に集約される。
作成したデータはレイヤー構造——つまり、後から各パーツを個別に編集できる状態——を保ったまま保存される。非デザイナーが叩き台を作り、プロが仕上げる分業も壊れない設計だ。
非デザイナーが使える仕様
変わったのは、「どのボタンを押すか」を覚えなくてよくなったことだ。やりたいことを言葉で伝えれば、ソフト側が操作を引き受ける。その仕組みを支える仕様が2つある。
Creative Skillsで繰り返しタスクを自動実行
頻繁に発生する作業パターンは「クリエイティブスキル」としてあらかじめ用意されている。商品画像の一括加工、モックアップ(完成イメージの見本)の自動作成といった定番工程が、選ぶだけで実行される仕組みだ。毎回ゼロから指示を組み立てる必要がない。
日本でもビジネスパーソンの約6割がすでに画像生成AIを仕事に使っているという調査がある。今回のアシスタントは、その延長線上で「もっと本格的なことが、もっと簡単にできる」ツールという位置づけだ。
現在の対応言語と制限事項
ベータ版は現在、英語での指示入力を主軸に動作する。日本語も対応範囲には含まれているが、複雑な指示での精度は実運用を通じて検証が続いている段階だ。「世界同時公開」とは地域を問わず試用できるようにしたことを指しており、すべての言語で均一の精度を保証する段階にはまだない。

