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「60億円出して850兆円企業を育てた」マスク氏がOpenAIを法廷で追及

「60億円出して850兆円企業を育てた」マスク氏がOpenAIを法廷で追及
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2026年4月27日、カリフォルニア州の連邦裁判所。証言台に立ったイーロン・マスク氏は、こう言い放った。「私は愚かだった(I was a fool)」

マスク氏が後悔しているのは、2015年から2017年にかけてOpenAIに提供した約3800万ドル——日本円で57億円ほどになる——の寄付だ。当時のOpenAIは「人類全体のためにAIを開発する」と掲げた非営利団体だった。株主への利益還元を目的とせず、公共の利益のために技術を開発する組織、という位置づけである。

その57億円が今、時価総額8500億ドル(約130兆円)を超える企業を生む種になった。マスク氏の言葉を借りれば、「無料のシード資金」だ。しかし寄付した本人には、その果実から1円も戻らない。

マスク氏はOpenAIとサム・アルトマンCEOらを相手取り、約2兆3000億円の損害賠償とアルトマン氏ら経営陣の解任を求めている。

「人類のために集めたお金が、誰かの巨大な富になっていいのか」——この問いが、今まさに法廷で問われている。

OpenAIが設立されたのは2015年。「特定の企業や個人ではなく、全人類のためにAIを開発する」という理念のもと、株主への利益還元を行わない非営利団体として産声を上げた。非営利団体とは、赤十字や町内会のように利益を目的としない組織のことだ。マスク氏はその創設者の一人である。

ところが2019年以降、マイクロソフトが総額約130億ドル(約2兆円)を出資。AI対話サービス「ChatGPT(チャットGPT)」が世界中で爆発的に普及すると、OpenAIは急速に巨大企業の顔つきになった。企業評価額は約8500億ドル(約130兆円)に達し、今年中には株式上場(IPO)——つまり会社の株を広く一般に売り出す手続き——も計画している。

「慈善で集めたお金が、一部の人間の富を生む機械に化けた」。マスク氏の主張はそこに集約される。対するOpenAI側は一言で返す。「あなたは自分がコントロールできないから怒っているだけだ」——。

善意か私欲か——言った言わないの応酬に見えるが、実は双方の主張を裏付けるメールや文書が残っていた。

目次

法廷に飛び出した内部文書の中身

表向きはビジネス訴訟だが、実態はシリコンバレー幹部たちの未公開メール、日記、テキストメッセージが次々と読み上げられる場になっている。

「10億ドルを出す」——創設者日記の記述

マスク氏側が最初に繰り出したのは、共同創設者の一人が残した記録だ。そこには「マスクは10億ドル(約1500億円)を出す」という記述があったという。実際の寄付は3800万ドルにとどまったが、マスク氏は「方針の違いで組織を離れた後も資金提供を続けるつもりだった」と証言した。寄付が少なかったのは自分のせいではない——それがマスク氏の言い分だ。

CEOの「二枚舌」メール

OpenAI側の弁護人ウィリアム・サビットが切り返した。法廷に提出されたのは、アルトマン氏がマスク氏に送ったメールだ。「あなたが求めるような支配権は渡せない」と明記されており、マスク氏が去ったのは「裏切られたから」ではなく「自分の思い通りにならなかったから」だとサビット弁護人は主張する。双方が都合のいいメールを持ち出し、同じ事実から二つの物語が生まれている。

元取締役の工作員疑惑

泥仕合はさらに深みにはまった。OpenAI側は、マスク氏がこの裁判を通じて自身のAI企業「xAI」のために内部情報を引き出そうとしていると主張。元取締役の一人がxAIの幹部と複数回にわたって接触し、OpenAIの研究開発に関する情報をやり取りしていた記録が証拠として提出された。「スパイだった」という指摘に、マスク氏側は否定したが、法廷はもはや単純な善悪の話ではなくなっている。

裁判の行方とAIビジネスへの影響

陪審員による評決は5月中旬に出る見通しだ。予測市場「Kalshi」でのマスク氏勝訴確率は49.9%——専門家でも読めない五分の勝負が続く。

注目すべきは賠償の行き先だ。マスク氏は求める賠償金を、自分ではなくOpenAIの非営利部門へ返還するよう要求している。「xAIのための嫌がらせ」というOpenAI側の批判を正面から封じる構造だ。勝訴すれば、アルトマンCEOとブロックマン氏の解任を裁判所が命じる可能性もある——民間企業の経営陣が法廷命令で強制交代するという、前例のない事態だ。

OpenAIが今年後半に計画するIPO(株式上場)へのリスクは、すでに投資家向けの開示資料に明記されている。逆にOpenAIが勝てば、非営利で集めた資金を営利事業に転用することが法的に認められ、AI企業の資金調達モデルが変わる。

この裁判が示す2つの結末

ChatGPTを仕事に使う人にとって、これは他人事ではない。「人類のため」に集められた57億円が何を生み、誰のものになるのか——その答えが、5月中旬に出る。

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