「ChatGPTよりも検索に強いAI」として急成長してきたPerplexityが、2026年4月17日、Mac向けに「Personal Computer」という新機能の提供を始めた。これは検索の改良ではない。AIの役割そのものが変わる話だ。
AIが「答える」から「動く」へ
これまでのAIは「聞いたら答えてくれる」ものだった。メールの文案を頼めば文章を返してくれる。調べ物を聞けば答えが出てくる。ただ、実際に動くのはいつも自分だった——メールを送るのも、調べた情報を使って作業するのも、人間の仕事として残り続けた。
新しいPersonal Computerは、その「自分が動く」部分をAIが引き受ける。Macのキーボードでコマンドキーを2回押すだけで起動し、指示を出したらあとはAIがパソコンを操作して最後まで仕事を終わらせる。こうしたAIを「自律型エージェント」——つまり「代わりに動くAI」と呼ぶ。
ChatGPTに聞くのは「自分でやる前に調べる」行為だ。今回のPerplexityは「自分でやらなくていい」という話になる。この差は根本的に違う。実際、この機能を試したある起業家は、通常なら18ヶ月かかる投資家リサーチ——候補の特定、投資方針の整理、レポートの作成まで——を数時間で終わらせたと報告している。
「パソコンを動かすAI」というカテゴリ自体は、Perplexityだけが追いかけているわけではない。OpenAI、Anthropic、GoogleといったIT大手が相次いでこの分野に参入しているが、いずれもまだ開発者向けのテスト段階か、使える場面が限られていた。Perplexityは月額200ドルという明確な価格と、iMessageからの遠隔指示という使い方を打ち出し、一般のビジネスパーソンが実際に使える形に整えた最初の例となる。
市場の反応は数字に出た。この機能の本格提供が始まった2026年2月からの1ヶ月で、Perplexityの年間売上規模は5割増加した。「質問に答えるAI」とは違うものが始まったと、市場が判断した結果だ。
言葉で指示するだけで何ができるか
「ダウンロードフォルダのファイルをプロジェクトごとに整理して」——そう言葉で伝えるだけでいい。AIは実際にフォルダを開き、中身を確認し、分類して移動する。プログラムを書く必要はない。日本語で話しかけるだけだ。
仕事はいつも複数のアプリにまたがる。メールで依頼を受け取り、カレンダーで空きを確認し、ブラウザで調べて、また別の画面で回答を送る。この行き来そのものが時間を食う。Personal Computerはその手順を丸ごと引き受ける。「来週の会議に向けて競合3社の最新情報をまとめてメールで送って」という指示を出すだけで、ブラウザで情報収集し、文章にまとめ、メールアプリから送信まで完結する。iMessageを使えば外出先からでも指示を送れる——帰宅する頃には作業が終わっている。
月200ドル、誰向けで何が変わるか
これだけの機能を使うには、「Perplexity Max」と呼ばれる月額200ドル(約3万円)のプランが必要だ。年払いにすると約2,000ドル。ChatGPTの有料版が月20ドルだから、単純比較で10倍の価格設定になる。
Perplexityが想定する利用者は、調査・資料作成・メール整理に毎日何時間も費やしているビジネスパーソンだ。その時間が浮くなら月3万円は安い——という論理で勝負している。
現時点では制約もある。
- 使えるのはMacのみで、Windowsには対応していない
- 価格は米ドル建てで、日本での正式展開や円建て価格は未発表だ
- Mac miniを24時間起動させたままAIサーバーとして使う想定もあり、今すぐ誰でも気軽に試せる段階ではない
自律型AIの市場規模は、2025年の約1.2兆円から2035年には約38兆円へ、10年で30倍以上に拡大すると予測されている(Research Nester)。安全面については、AIはユーザーのMacを直接動かすのではなく、クラウド上の隔離された環境で作業する設計だ。ユーザーはいつでも確認・停止できる。
月200ドルという価格が示す通り、今はまだ一部のビジネスパーソンが試す段階にある。ただ、「AIに聞く」のと「AIに動かせる」のとでは、仕事の進め方そのものが変わる。その入口に、Perplexityが今回の一手を打った。

