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「BIMは大手だけのもの」を終わらせるかもしれないAI|Ishigaki-IDSが中小ゼネコンのBIM化を変える

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建物の設計情報をデジタルで一元管理する仕組み「BIM」。国が大型建築での活用を義務化する動きが進んでいますが、BIMデータの”仕様書”を書ける人材が圧倒的に足りていません。この仕様書づくりを自動化する建設専用AI「Ishigaki-IDS」が、国のプロジェクトから誕生しました。何ができて、今どこまで進んでいるのか。BIMに関わる人が押さえておきたい動きを整理します。

目次

Ishigaki-IDSとは何か

BIMの壁と「建設特化AI」

BIM(ビム)とは、建物の形・材質・設備などの情報をまるごと3Dデジタルデータで管理する仕組みです。設計から施工、完成後の維持管理まで一貫して使えるため、日本でも大型建築で導入の義務化が進んでいます。

ただし、BIMデータを正しく作るには「どんな情報を、どの形式で入れなければならないか」を定めた仕様書が欠かせません。これをIDS——正式名称はInformation Delivery Specification——と呼びます。
簡単に言えば、BIMデータの”注文書”です。「この壁には材質と厚みの情報を必ず入れてね」といったルールを、ソフトが読める形で書いたファイルだと思ってください。

IDSは、建設分野の国際標準化団体buildingSMARTが2024年に正式な国際規格として策定しました。今後業界標準として広がっていく見込みですが、問題はこのIDSを書ける人が極端に少ないこと。1件でも数時間以上かかる手作業で、人手不足の現場にとって大きなボトルネックになっています。

「それならChatGPTに書かせればいいのでは?」と思うかもしれません。
しかしIDSは2024年に規格化されたばかりの新しいフォーマットです。ネット上にお手本となるデータがほとんど存在せず、汎用AIではIDSを正確に生成できないことが実証されています。建設の専門知識を叩き込んだ”特化型AI”でなければ、この問題は解けませんでした。

[図解] 左から右へ「設計図面」→「BIMデータ(3D形状・材質・設備の情報)」→「IDS(何の情報を・どの形式で入れるかの注文書)」→「Ishigaki-IDSが自動生成」の4ステップを矢印でつなぐフロー図。IDSの箱に「←ここが専門家しか書けなかった」と吹き出しを添える

経産省GENIACが育てた理由

そこで登場したのがIshigaki-IDSです。

開発したのは建設・BIM分野に特化した日本のスタートアップ、ONESTRUCTION株式会社。経済産業省が主導し、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が運営するAI開発支援プロジェクト「GENIAC」のもとで開発されました。
国が予算をつけて後押しするほど、BIM周りの自動化は国策レベルの課題だということです。

ベースとなったのは、オープンソース(誰でも使える公開型)のAIモデル「Qwen3」。ここに、IDS生成だけに絞った専門的な追加学習を施しています。

Ishigaki-IDSで何ができるのか

IDS自動生成の仕組み

では、建設専用AIなら実際どこまで自動化できるのか。

使い方は2通りです。ひとつは「この壁には材質と厚みの情報を入れてほしい」と日本語で指示する方法。もうひとつは、BIMデータのチェック項目をまとめた一覧ファイルを渡す方法です。

STEP
日本語で「どんな情報がほしいか」を指示、またはチェック一覧ファイルを渡す
STEP
Ishigaki-IDSが規格に沿った仕様書を自動生成
STEP
BIMソフトにそのまま読み込み可能

どちらの場合も、出力されるのはBIMソフトがそのまま読み込める仕様書ファイル。ONESTRUCTION社の技術記事によれば、専門家が数時間かけていた仕様書づくりが、AIへの入力ひとつで完結します。

汎用AIとの違い

  • 建設特化のIshigaki-IDSは、専用テストで規格準拠のファイルを安定して生成できることを確認
  • 汎用AI(ChatGPT等)はIDSの記法ルールを守れず実用に耐えなかった

「結局、ChatGPTでもいけるのでは?」という疑問には、データで答えが出ています。
開発元はモデルと同時に専用の評価テスト「IDS-Bench」を公開。汎用AIとの比較で、Ishigaki-IDSは規格に沿った仕様書を安定して生成できることが確認されています。

何でもできるAIより、その分野だけに絞ったAIが勝つ。IDSはまさにその典型でした。

Ishigaki-IDS導入の現実

コストとセキュリティの実情

ここまで読んで「で、うちの会社で使えるの?」と思った方も多いはずです。

率直に言うと、Ishigaki-IDSは研究開発の成果物であり、企業がすぐに業務に組み込める”製品”にはまだなっていません。
料金プランや商用利用の条件、クラウドで使えるのか自社サーバーで動かせるのか——企業が判断材料にしたい情報は、現時点でどれも未公開です。建設図面やBIMデータには建物の構造情報が含まれるため、外部のAIに渡すこと自体にセキュリティ上の懸念もあります。

BIMデータを外部AIに渡す際の注意点

建設図面やBIMデータには建物の構造情報が含まれる。外部AIに渡す際のセキュリティ方針(クラウド利用か自社サーバーか)はまだ示されていない

今どの段階で、いつ使えるか

Ishigaki-IDSのモデルは2025年3月に公開済み。技術者が検証目的で触れる段階にあるが、一般企業が業務で使える製品化はこれから

Ishigaki-IDSのモデル自体は2025年3月に公開されており、技術者であれば検証目的で触ることは可能です。

次のステップはすでに動き出しています。現在進行中のGENIAC第4期では、IDS自動生成のさらに先——設計図面を渡すとBIMデータが一貫して出てくるパイプラインの実証を、2025年度中に目指しています。IDS自動生成はその入口にすぎず、ここで成果が出れば実用化のスピードが一気に上がる可能性があります。

製品としての提供は早くても1〜2年先でしょう。ただ、BIM義務化の波と噛み合えば、普及は想像以上に速いかもしれません。
「今すぐ何かする」話ではなく、”覚えておく”話です。BIMに関わる仕事をしているなら、Ishigaki-IDSという名前を頭の片隅に置いておいて損はありません。

建設現場でのAI活用がどこまで進んでいるか気になる方は、あわせてご覧ください。

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