「シフト作成は○○さんに聞いて」——介護の現場で何度も耳にする言葉です。
その○○さんが休んだら? 辞めたら? 誰も引き継げないまま、毎月の綱渡りが続いている施設は少なくありません。
この記事では、コニカミノルタQOLソリューションズが提供するシフト自動作成AI「miramos(ミラモス)」が、なぜその綱渡りを終わらせられるのかを、仕組みの中身から掘り下げます。料金の相場観や競合ツールとの違い、導入の現実的なハードルも正直にお伝えするので、自分の施設で使えそうかどうか、読み終わる頃には判断材料が揃うはずです。
miramosが介護シフトの属人化を壊す仕組み
暗黙の条件を「見えるルール」に変える
シフトが特定の人にしか作れなくなるのは、その人の頭の中に「書かれていないルール」が溜まっているからです。
人員配置基準(国が定めた「この時間帯に最低○人必要」という決まり)を満たすのは大前提。でも実際のシフト作成はそれだけでは終わりません。
「AさんとBさんは夜勤で組ませない」「Cさんは子どもの迎えがあるから遅番NG」「勤務間インターバル(前のシフト終了から次のシフト開始まで空ける時間)は最低11時間」——こうした条件が、担当者の記憶と経験だけで処理されています。
介護施設のシフト属人化の原因を整理した記事でも、属人化の根っこにあるのは「制約条件が言語化されていないこと」だと指摘されています。
つまり問題の本質は、シフト作成が難しいことではなく、判断基準が誰にも見えない場所にあることなのです。
miramosはここを正面から潰しにいきます。
導入時に、ベテラン担当者の頭の中にある条件——配置基準、勤務形態、スタッフ同士の相性、個別の事情——を設定画面に一つずつ登録していきます。
いわば「暗黙知の棚卸し」です。この作業が終わると、誰がシフトを作っても同じ基準が適用される状態になります。AIの前に、まず「見える化」がある。ここがmiramosの設計の肝です。
miramosの本質はAIではなく「暗黙知の見える化」。ベテランの頭の中にある条件をシステムに登録することで、担当者が誰であっても同じ基準でシフトを作れる状態を作る
![[図解] 左側に「ベテラン担当者の頭の中」(配置基準・相性・家庭事情・勤務間インターバルが混在)、中央に矢印「設定画面に登録」、右側に「miramosのルール一覧」(同じ条件が項目として整理されている)という3ステップのフロー](http://ai-mikata.com/wp-content/uploads/2026/05/autopress-51.webp)
AI候補から人が選ぶ——丸投げではない設計
ルールを登録したら、あとはAIの出番です。
スタッフはスマートフォンから希望休を入力します。紙の希望表を回覧したり、LINEで個別に集めたりする手間がなくなるだけでも、地味に大きな改善です。入力漏れや転記ミスも減ります。
miramosは集まった希望休と、登録済みのルールを組み合わせて、シフト候補を自動生成します。
ここで大事なのは、AIが出すのは「候補」であって「決定」ではないという点です。最終的にどのシフトを採用するかは、管理者が画面上で確認し、必要に応じて微調整して決めます。
「AIに丸投げ」ではなく「AIが下書き、人が仕上げ」という分業モデル。
joint-kaigoの導入レポートでは、現場から「大部分はそのまま使える。軽く修正するだけ」という声が紹介されています。この「候補止まり」の設計が、現場の「AIに任せて大丈夫なの?」という不安を和らげるカギになっています。
紙の希望表やLINEでの個別収集が不要になり、入力漏れや転記ミスも防げます。
配置基準・相性・個別事情など、登録済みの条件をすべて考慮したシフト案を自動で作成します。
管理者が画面上で候補を確認し、必要に応じて手を加えてシフトを確定します。
時間半減だけじゃない——現場の空気が変わる理由
作成時間と手直し頻度のリアルな数字
介護ニュースJointの取材では、特養での導入後にシフト作成時間が従来の半分程度になった事例が紹介されています。
オリンピアの導入事例でも、管理職が2〜3日かけていた作業の負担が大幅に軽減されたと報告されています。
これを人件費に換算してみましょう。
シフト作成に月20時間かけていた施設なら、半減で月10時間の削減。管理者の時給を2,000円と仮定すると、月2万円・年間24万円相当の工数が浮く計算です。
さらに「修正のやり取り」「希望休の聞き取り」といった周辺作業の削減分を加えると、実質的な効果はもう少し大きくなります。料金が非公開のため単純比較はできませんが、月額数万円台のツールであれば半年〜1年で回収できる可能性があるラインです。
シフト作成を月20時間→10時間に短縮すると、年間約24万円相当の人件費削減になる計算です。周辺作業の削減分も含めると、月額数万円台のツールなら半年〜1年での回収は現実的な範囲です。
ただし「入れた瞬間に半分」とはいきません。
最初のうちはAIが出す候補への手直しが多くなります。ルール登録が甘いと、現場感覚とズレたシフトが出てくるからです。
でも使い続けるうちに「この条件が抜けていたな」と気づいてルールを足していくので、手直しの頻度は徐々に減っていきます。ここは焦らず育てる感覚が大事です。
「えこひいき」がなくなると職場はどうなるか
時間の短縮よりも、実は現場への影響が大きいのはこちらかもしれません。
手作業でシフトを組んでいると、どうしても「なぜ私ばかり夜勤が多いの?」「あの人だけ楽なシフトじゃない?」という声が出ます。
担当者に悪意がなくても、基準が見えないから疑われる。これがシフト作成者にとって一番つらいストレスです。
miramosを通すと、シフトは登録されたルールに基づいて機械的に生成されます。
不満があったとしても、矛先は「担当者個人」ではなく「ルール設定」に向かいます。
「Aさんのえこひいき」ではなく「この条件をこう変えたほうがいいのでは」という改善提案に変わるのです。これがチームの空気を変えます。
シフトへの不満が「担当者個人への攻撃」から「ルールの改善提案」に変わる——これがmiramosが職場の空気を変える最大の理由です。
配置基準チェックで経営リスクも防ぐ
現場の空気だけでなく、経営面でも見逃せない効果があります。
miramosは人員配置基準(「日中はスタッフ○人以上」といった国の決まり)を自動でチェックしてくれます。手作業だと、忙しい月にうっかり基準を割ってしまうことがあります。
これが後から発覚すると、介護報酬の返還を求められる「返戻」(へんれい)が発生するリスクがあります。地味ですが、経営を揺るがしかねない問題を仕組みで防げるのは大きいです。
うっかり人員配置基準を下回ると、後から介護報酬の返還(返戻)を求められる可能性があります。繁忙期に見落としやすいこのリスクを、miramosの自動チェック機能なら仕組みとして防ぐことができます。
他のシフト自動作成AIとmiramosを比べる
介護特化と汎用ツールの決定的な違い
世の中にはシフト自動作成ツールがいくつもあります。ただ、その多くは飲食店や小売店の発想で作られています。
「希望シフトを集めて、人数が足りるように割り振る」——汎用ツールの基本はこれです。
でも介護施設のシフトは、そこがゴールではありません。
人員配置基準を時間帯ごとに満たす必要がありますし、夜勤明けの勤務間インターバルも守らなければなりません。
こうした法令上の制約に対応していないツールを選んでしまうと、結局は手作業で確認し直すことになります。自動化した意味が半減するわけです。
具体的な競合ツールとの比較
介護業界で名前が挙がるシフト作成ツールをいくつか並べて、違いを整理してみます。
| ツール名 | 特徴 | 料金目安 | 介護特化度 |
|---|---|---|---|
| miramos(コニカミノルタ) | AI自動生成+暗黙知の見える化。配置基準の自動チェック。freee勤怠連携 | 非公開(見積もり制) | ◎ 介護・医療専用設計 |
| CWS for Care(テクノ・サービス) | 介護向け勤務シフト作成。複雑な勤務パターンに対応 | 月額制(規模により異なる、目安として1拠点あたり月数万円〜) | ◎ 介護特化 |
| シフオプ(リクルート) | 飲食・小売中心だが医療介護プランあり。希望収集〜自動割当 | 1人あたり月額300円〜 | △ 汎用寄り(介護プランあり) |
| ほすぴタッチ | 医療・介護施設向け。夜勤パターン・配置基準対応 | 月額数万円〜(規模による) | ○ 医療介護向け |
選ぶときに一番大事なのは、「自分の施設のルールがどこまで登録できるか」をデモで試すことです。「介護対応」と謳っていても、配置基準のチェックが手動だったり、勤務間インターバルの自動計算がなかったりするケースがあります。
miramosの独自性は、AI候補生成の前段階にある「暗黙知の棚卸し」というプロセスそのものです。
他のツールが「シフトを自動で作る」ことをゴールにしているのに対し、miramosは「シフト作成のルールを組織の資産にする」ことまで射程に入れています。ここが介護・医療業界に特化したシフト自動作成サービスとしてのmiramosの設計思想です。
料金・対応規模・勤怠管理連携
miramosの料金は公式サイトに掲載されていません。施設の規模や条件に応じた見積もり制です。
miramosの料金は非公開・見積もり制です。競合は月額1.5万〜数万円のレンジが多く、問い合わせ時に「自施設の規模・拠点数」を伝えるとスムーズです。
競合のシフオプが1人月額300円〜(50人規模なら月1.5万円〜)、CWS for Careが月数万円〜であることを踏まえると、miramosもおそらく月額数万円〜のレンジと推測されますが、正確な金額は問い合わせないとわかりません。
対応規模については、小規模なグループホームから大規模な特養まで幅広く対応しています。オリンピアの導入事例のような複数拠点を持つ法人での導入実績もあります。
小規模施設(10〜20人規模)での導入は現実的か?
これは正直、費用対効果の見極めが必要です。スタッフが少ない施設はルール設定の初期工数が相対的に重くなります。「5人のシフトなら頭で組めてしまう」という現実もあります。
ただし、属人化の問題は規模に関係なく起きます。むしろ小規模施設のほうが「一人辞めたら誰もシフトを作れない」リスクは深刻です。コスト面がクリアできるなら、小規模でも導入メリットはあります。
2026年5月には、freee勤怠管理Plusとの連携が発表されました。
これにより、miramosで作成したシフトデータがそのまま勤怠実績に流れ、給与計算まで二重入力なしでつながるようになっています。シフト作成と勤怠管理を別々に手入力していた施設にとっては、見逃せないアップデートです。
miramos導入前に知っておきたい限界と現実
ここまでmiramosの強みを紹介してきましたが、導入すれば全部うまくいく——という話ではありません。
AIにできないこと、導入時に必ずぶつかる壁を正直にお伝えします。ここを知っておくかどうかで、導入後の満足度がまるで変わります。
AIが処理できない「人間関係の機微」
「この2人を同じ夜勤に入れると雰囲気が悪くなる」「Dさんは最近体調が不安定だから連勤を避けたい」——こうした非言語の情報を、AIが自動で察知することはできません。
miramosに限らず、どんなシフトAIでもここは同じです。人間関係の機微は、人間がルールとして手動で登録するしかありません。
ここで問題になるのが、そうした配慮がそもそも「言葉にしにくい」ということです。
「なんとなく合わない」「最近ちょっと様子がおかしい」——感覚的な判断は、設定画面の選択肢にきれいに収まりません。
だからこそ、導入初期にベテラン担当者と一緒に「どんな配慮をしているか」を洗い出す時間を取ることが大事になります。全部を完璧に登録する必要はありません。まず大きな制約から入れて、運用しながら足していくのが現実的です。
人間関係・体調など「言葉にしにくい配慮」はAIが自動で読み取れない。完璧を目指さず、大きな制約から登録して運用しながら育てるのが現実的。
そしてもうひとつ大事なのが、導入後もルール更新は続くということ。
職員が異動する、新しい資格を取る、家庭の事情が変わる——そのたびにルールを見直す必要があります。「一度設定すれば放置でOK」ではありません。月1回でもルールの棚卸しを習慣にしておくと、精度が落ちにくくなります。
導入ステップと現場の巻き込み方
技術的な導入より、実は難しいのが現場スタッフの心理的な壁です。
「AIに勝手にシフトを決められるの?」——この誤解が広がると、導入は確実に失敗します。
ここで効くのが、miramosの「候補止まり」という設計思想です。
AIが出すのはあくまでシフトの候補。最終的に採用するかどうかを決めるのは管理者です。この仕組みを導入前に丁寧に説明するだけで、現場の受け止め方は大きく変わります。
「決めるのはあなたたち。AIは下書き係」——このひと言を全スタッフに伝えておくことが、何よりの導入準備です。
巻き込み方のコツは、ベテラン担当者を「ルール設定役」にすることです。
これまでシフトを一手に担ってきた人は、実は一番多くの暗黙知を持っています。その人に「あなたの知識をシステムに移してほしい」と役割を渡すことで、排除ではなく参画になります。
「自分の仕事が奪われる」ではなく「自分のノウハウが施設の資産になる」と感じてもらえれば、導入の最大の壁はクリアです。
ベテラン担当者を排除するのではなく「ルール設定役」として巻き込む。その人の暗黙知をシステムに移すことで、個人のノウハウが施設全体の資産に変わる。
まとめ
miramosの本質は「シフトを自動で作るAI」ではなく、「ベテランの頭の中にある暗黙ルールを、誰でも使える形に書き出す仕組み」です。
その書き出す手間こそが導入の分かれ道になります。
まずは公式サイトから資料請求か問い合わせをして、自施設のルールがどこまで登録できるかを確認してみてください。デモで「うちの条件を入れたらどうなるか」を試せれば、導入の判断はぐっと具体的になります。

