グーグルで何かを調べても、そのまま答えを読んで終わる。そういう人が急速に増えている。検索結果に並ぶWebサイトはクリックされず、AIが出した答えで完結する。その比率はすでに6割を超えた。企業側からすれば、客が来なくなるという事態だ。だがAI経由で来た人の購買率は、通常の検索からの4.4倍に達する——数は減るが、来た人は買う。逆転が起きている。
アドビが「AI版SEO」ツールを発表した
その逆転を捉えるための専用ツールを、アドビが発表した。2026年6月17日のことだ。ツールの名前は「Adobe Brand Visibility(アドビ・ブランド・ビジビリティ)」。SEO(検索エンジン最適化——グーグルで上位に表示されるための施策)のAI版と位置づけられる、新しいカテゴリーのツールだ。発表の時点では価格や一般提供の開始時期は明らかにされていない。
主要AI検索すべてに対応
ChatGPT、Google AI Mode(グーグルのAI回答機能)、Perplexity(パープレキシティ)など、現在広く使われているAI検索サービスを横断して、自社のブランドがどう紹介されているかを確認・改善できる。
3億件のデータで映り方を分析
2026年5月、アドビはSEO分析ツールの大手Semrush(セムラッシュ)を買収した。この買収で手に入れたのが約2億8900万件の実際のAI検索データだ——世界中の人々がAIに何を聞いているか、リアルな記録である。業界最大規模のこのデータが、Adobe Brand Visibilityの中核を担う。アドビがこのツールを打ち出した背景には、検索そのものの仕組みが根本から変わっているという現実がある。
検索の6割がクリックなしで終わる
最近、スマホで何かを調べて、出てきたサイトをひとつも開かずに終わったことはないだろうか。グーグルの「AI Overview(AIによる概要表示)」が答えをまとめて出してくれるから、それで十分だと感じる——そういう検索が今、急速に増えている。
この割合は今も加速している。ゼロクリック率(クリックされない検索の割合)は2024年に60%台だったが、2026年初頭には68%に達した(SparkToro/Similarweb調査)。スマートフォンに限れば77%——4件に3件は、誰もサイトを訪れない(同調査)。企業側にとっては、広告を打っても検索流入に投資しても、訪問者が来ない構造に変わってきている。
ところが逆転がある。AIに紹介されてサイトへ来た人は、普通の検索経由の4.4倍の確率で購入する。来る人は減り、来た人はほぼ買う——この構造変化が、AIの回答に自社名が載るかどうかを、新しい集客の核心に変えた。
AIに自社が出ない原因を特定して修正する
では、なぜAIの回答にある企業は出て、ある企業は出ないのか。
AIが裏で行う派生検索を可視化
カギは、AIが質問を受け取ったときの裏側の動きにある。「ダイエットに良いサプリは?」とAIに聞いても、AIはその一文をそのまま調べるのではない。「40代女性に向いているか」「副作用は少ないか」——ユーザーの意図を数十の関連質問に自動で分解し、それぞれを調べてから回答を組み立てる。これを「Query Fan-out(クエリの拡散)」と呼ぶ。
この「裏の質問群」に自社のコンテンツが対応できていなければ、どれだけ良い商品でも回答には出てこない。Adobe Brand Visibilityはこの派生質問を一覧で表示し、どのトピックへの対応が薄いかを特定する。
ギャップを数分で修正する
表示されない原因はコンテンツだけではない。「AIにサイトを読まれない設定になっている」「CDN(コンテンツ配信ネットワーク——世界中にデータを分散して高速配信する仕組み)の設定ミス」「ページエラー」——こうした技術的な問題も表示漏れに直結する。新ツールはこれらを専門家なしで数分以内に修正できるとしている。
アドビの発表資料によれば、同ツールを導入した海外の金融系スタートアップ(社名は非公開)では、AI検索での露出が300%向上し、問い合わせが40%以上増えた。
市場全体の動きも急だ。アドビ自身の調査によれば、米国の小売サイトへのAI経由アクセスは2024年10月から2026年5月の間に1,324%増えている。ツールが必要とされる市場は、もうそこにある。

