ケアマネジャーの1日のうち、利用者と向き合える時間はどれくらいありますか。書類を書いて、電話して、FAXを整理して——気づけば夕方。最近「AIでケアプランの書類作成が8割減る」という話を耳にする機会が増えました。この記事では、その数字がどこまで本当なのかを検証し、「まず1件、一番ラクな書類から試す」という確実な進め方まで具体的にお伝えします。
AIケアプラン作成で何割減るか
原案自動生成で約4割減の実績
ケアプランとは、利用者一人ひとりの状態に合わせて「どんな介護サービスを、いつ、どれくらい使うか」をまとめた計画書のことです。
ケアマネはこの計画書だけでなく、毎月のモニタリング記録(利用者の状態確認メモ)やサービス担当者会議の議事録など、関連書類も大量に書いています。
厚生労働省はケアプラン作成へのAI活用を推進しており、2024年度からモデル事業(試験的な導入プロジェクト)を複数の自治体で実施しています。背景にあるのは深刻なケアマネ不足です。
このケアプランの下書きをAIに任せるとどうなるか。過去の記録データを学習したAIが、利用者の状態に合った文例や項目を自動で提案してくれるため、ゼロから文章を考える手間が大きく減ります。
作成時間は約4割減。ゼロにはなりませんが、浮いた時間を利用者やご家族との会話に充てられます。
ただし、ここで知っておくべき事実があります。書類の種類によって、AIの効果はまるで違うのです。
ケアプラン業務をAI化した場合の試算データを見ると、毎月ほぼ同じ項目を確認して書く「モニタリング記録」は、1件あたり30分が約10分に短縮されます。約67%の削減です。
月に換算すると17.5時間が5.8時間になる——つまり月12時間近くが浮く計算です。
一方で、初回のアセスメント(利用者の状態を多角的に把握するための聞き取りまとめ)は、一人ひとり内容がまったく異なるため、AIの出番はほとんどありません。
![[グラフ] ケアマネの書類種類別AI削減率を示す棒グラフ。モニタリング記録:67%減、ケアプラン原案:約40%減、FAX書類整理:約90%減、初回アセスメント:ほぼ0%](http://ai-mikata.com/wp-content/uploads/2026/06/autopress-39.webp)
つまりAIが得意なのは「型が決まっている書類」です。
同じ項目を繰り返し書く記録系は劇的に速くなりますが、利用者ごとにゼロから考える書類は、どうしても人間の判断が必要です。
なお、ここで挙げた削減率の数字は、AIツールメーカーによる実証データやパイロット導入の結果にもとづいています。全国規模の独立した調査結果はまだ公表されていませんが、厚労省のモデル事業でも同様の傾向が報告されており、方向性としては信頼できる数字です。
周辺書類で8割に届く条件
「書類作成時間8割削減」。この数字はウソではありません。ただし、ケアプラン本体だけでは絶対に出ない数字です。
ケアマネの事務仕事はケアプラン作成だけではありません。FAXで届く主治医意見書の整理、各事業所からの報告書の仕分け、サービス担当者会議の日程調整、支援経過の記録。こうした周辺業務まで含めてAI化して、初めて8割に届きます。
実際、FAXで受信した書類をAIが自動で解析・整理するシステムを導入した事業所では、事務処理時間を約9割削減したという報道があります。
約4割削減
67%削減
約9割削減
こうやって積み上げて、ようやく8割に届くのです。
逆に、ケアプランの原案生成だけを入れて「8割減るはず」と期待すると、現実は5割程度で止まります。
効果を最大化するコツは、AIが得意な書類から順番に任せていくことです。
まずは型が決まったモニタリング記録から始めて、次にFAX整理、そしてケアプラン原案へ。少しずつ範囲を広げるのが、確実な進め方です。音声入力AIとの組み合わせでさらに効率化する事例も出てきています。
ケアマネ向けAIツールの実力
では、実際に何を使えばいいのか。ツールは大きく2種類に分かれます。
専用ツールの仕組みと使い方
介護専用のAIツールは、介護保険のルールや用語をあらかじめ学習しているのが強みです。利用者の基本情報を入力すれば、過去データから適切な文例やケアプランの原案を自動で提案してくれます。
「なぜこの提案なのか」という根拠も表示されるので、そのまま使うか直すかの判断もしやすい仕組みです。
そのほかにも、主要な介護ソフトメーカーがAI機能の追加を進めています。ワイズマンの「WiseCareプラン」やNDソフトウェアの「ほのぼのNEXT」など、すでに使っている介護ソフトにAIオプションが加わるケースも増えています。新しいツールを探す前に、まず自分の事業所のソフトを確認してみてください。
費用はツールの種類によって差があります。目安をまとめました。
| ツールの種類 | 月額の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| ChatGPT(無料版) | 0円 | 介護用語の手直しが必要 |
| 既存介護ソフトのAIオプション | 数千円〜2万円程度 | 導入が簡単、いま使っているソフトに追加 |
| AI特化型ツール(SOINなど) | 1万〜5万円程度 | 介護保険ルールを学習済み、根拠表示あり |
事業所の規模や利用人数で変わるため、具体的な見積もりは各メーカーに問い合わせてください。
料金は事業所の規模や利用者数で変わるので、正確な金額は各メーカーに問い合わせてください。ただ、この後紹介する補助金を使えば自己負担は大きく減らせます。
汎用AIで始める低コスト活用
「お金をかける前に、まず試したい」。それならChatGPTなどの汎用AIから始める方法もあります。無料で今日から使えます。
介護の専門用語は専用ツールほど正確ではないので手直しは必要ですが、「ゼロから書く」と「下書きを直す」では負担がまるで違います。
「パソコンが苦手」でも心配いりません。 ChatGPTの操作は、LINEでメッセージを送るのとほとんど同じです。文字を打って送信ボタンを押すだけ。難しい設定も、専門的な操作も一切ありません。スマホからでも使えます。
実際、AIに下書きやアイデア出しを任せるところから始めたケアマネが増えていると報告されています。最初は半信半疑でも、1件試すと「こんなに楽なのか」と驚く方がほとんどです。
まず無料のChatGPTで「AIに書類を任せる感覚」を体感し、効果を実感してから専用ツールの導入を検討する。この順番が一番失敗しにくい。
まず無料で体感して、「これは使える」と思えたら専用ツールを検討する。この順番が一番無理がありません。
AI導入前に確認すべきこと
ただし、使い始める前に2つだけ知っておくことがあります。
個人情報と利用者への説明
利用者の名前や住所をそのままAIに入力してはいけません。「田中花子さん、東京都○○区在住」ではなく「80代女性、膝の痛みで歩行困難」のように書き換えてから使えば問題ありません。
利用者やご家族への説明はシンプルでOKです。「書類の下書きにAIを使っていますが、最終確認は必ず私がしています」——これだけ伝えておけば十分です。
よくある導入失敗と対策
一番多い失敗は、AIが出した文章をそのまま提出してしまうことです。AIは過去のデータから文例を提案してくれますが、目の前の利用者が「先週転んだ」「最近食欲が落ちた」といった最新の変化までは知りません。
必ず自分の目で読んで、利用者の今の状態に合っているか確認してください。AIは優秀な下書き係であって、ケアマネの代わりではありません。
この2つを押さえれば、安心して使い始められます。
AI導入の進め方とコスト
ここまでで、AIが得意なのは「パターンが決まった記録系の書類」だとわかりました。注意点も確認できたので、あとは実際にやってみるだけです。
導入ステップと費用の目安
ChatGPTは無料で使えます。専用ツールは前述のとおり月額1万〜5万円が相場ですが、いきなりお金をかける必要はありません。
まず無料で試して効果を実感し、「もっと便利にしたい」と思ったタイミングで専用ツールを検討する——この順番が一番失敗しにくい進め方です。
導入の進め方は4ステップで考えてください。
![[図解] AI導入4ステップのフロー図。左から右へ①書類を選ぶ→②1件だけ試す→③時間を比較→④範囲を広げる。各ステップを丸で囲み矢印でつなぐ。中央に「まず1件」を大きく強調](http://ai-mikata.com/wp-content/uploads/2026/06/autopress-38.webp)
ケアマネ2名・担当35件の事業所で試算してみましょう。モニタリング記録だけでも月70件。手書きなら1件30分で合計35時間かかるところが、AI活用なら1件10分の合計約12時間に。月23時間が浮きます。
仮にケアマネの時間単価を2,000円とすれば、月4万6,000円分の時間が戻ってくる計算です。SOINなどの専用ツール(月額1万〜5万円)でも、1〜2ヶ月で元が取れます。
まず1件試すまでの流れ
先ほどの分析で、AIの効果が一番大きいのは「毎月ほぼ同じ項目を書く書類」でした。だから最初に試すなら、モニタリング記録がおすすめです。
効果を一番実感しやすく、「これならいける」という手応えが最初に来ます。
手順を書きます。パソコンが苦手な方でも大丈夫です。LINEで文字を打てるなら、もうできます。
chatgpt.comにアクセスし、Googleアカウントでログインします。アプリのインストールは不要です。スマホでもパソコンでも同じように使えます。
「80代女性、要介護2、膝の痛みで歩行困難、週2回デイサービス利用、先月から食欲やや低下」のように、名前や住所を含めずに状態だけを書きます。
AIへの指示はシンプルでOKです。「以下の情報をもとに、モニタリング記録の文章を作ってください」と入力して送信ボタンを押すだけ。難しい言葉(プロンプト、と呼ばれます)を覚える必要はありません。
AIの下書きを読んで、利用者の最新の状態と合っているか確認します。「先週転んだ」「最近表情が暗い」など、AIが知らない情報は自分で書き足してください。
慣れれば5分です。30分かけてゼロから書いていた記録が、10分以内に終わります。
1件やってみて「楽だな」と思えたら、翌月から残りの件数にも広げてみてください。それだけで月12時間が浮きます。浮いた時間で、利用者やご家族ともう少しゆっくり話ができるようになるはずです。
まず1件のモニタリング記録をChatGPT(無料)で試す。5分で終わる。効果を実感してから専用ツールや補助金を検討しても遅くない。
専用ツールの導入を検討する段階になったら、デジタル化・AI導入補助金2026を活用できます。これは2024年度まで「IT導入補助金」と呼ばれていた制度の後継で、中小企業・小規模事業者が対象です。
介護事業所でも申請可能で、小規模事業者なら導入費用の最大4/5(80%)が補助されます。補助上限額は最大450万円。たとえば月額3万円の専用ツールを年間契約(36万円)した場合、最大で約29万円が補助される計算です。
申請には「IT導入支援事業者」(ツールメーカーが兼ねていることが多い)を通す必要があるので、SOINやワイズマンなど気になるツールのメーカーに「補助金を使いたい」と伝えれば、申請手続きも一緒にサポートしてもらえます。補助金申請の具体的な進め方はこちらの記事で詳しく解説しています。
ただ、補助金の申請を考えるのは、まず1件試してからで十分です。
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