「AIが電話に出る」と聞いて、「どうせ”1番を押してください”のアレでしょ?」と思った方は多いはずです。2026年6月に正式リリースされた「もしもしAI」は、そのイメージとはまったくの別物です。お客さんの言葉をそのまま聞き取って人のように返事をするAI電話——バイト代と比べてどうか、どこまで任せられるのか、店舗経営者の目線で本気で検討してみました。
ボタン操作型とは違うAI電話
「ご予約は1番、営業時間は2番を押してください」——あのタイプの自動音声は、業界では「IVR(自動音声応答)」と呼ばれています。お客さんが「来週の土曜、4人で予約できますか?」と話しかけてもスルーです。ボタンを押さないと先に進めない、一方通行の仕組みだからです。
もしもしAIは構造が違います。お客さんの言葉をAIがその場で聞き取り、あらかじめ設定した台本に沿って自然な音声で答えます。つまり「言葉を理解して、言葉で返す」電話です。
開発元エクサテックのリリースによると、応答まで約1秒。「聞こえてます?」と聞き返したくなるような間が生まれにくい設計になっています。
ボタン操作型(IVR)
IVRy(月額3,000円〜)などは、電話を正しい窓口に振り分けるのが役割
もしもしAI
電話を受けて、用件を聞いて、対応まで済ませるのが役割
似ているようで、やっていることがまるで違います。
![[比較図] 左側「ボタン操作型(IVR)」:お客さんが電話→「1番を押してください」→ボタン操作→担当者へ転送。右側「もしもしAI」:お客さんが電話→普通に話す→AIが聞き取り・台本に沿って応答→用件完了。左は「振り分けるだけ」、右は「対応まで完了」とラベルを付ける](http://ai-mikata.com/wp-content/uploads/2026/06/autopress-37.webp)
とはいえ「人と話すように会話できます」と言われても、ピンとこないですよね。次のセクションで、実際の予約電話がどんなやりとりになるのか丸ごと再現してみます。
店の電話にAIが出るとこうなる
予約・問い合わせの応答例
たとえば金曜の夜、仕込みの真っ最中に予約の電話が鳴ったとします。もしもしAIが出ると、こんなやりとりになります。
AI:「お電話ありがとうございます、〇〇食堂です。ご予約やお問い合わせを承ります」
お客さん:「来週の土曜に2人で行きたいんですけど」
AI:「来週の土曜日、6月21日ですね。ご希望のお時間はございますか?」
お客さん:「18時半くらいで」
AI:「18時30分、2名様ですね。お名前をお願いできますか?」
お客さん:「田中です」
AI:「田中様、6月21日の土曜日、18時30分に2名様でお取りしました。ご来店お待ちしております」
1分かかりません。応答の間隔も約1秒なので、電話越しだと人間同士の会話とほぼ変わらないテンポです。この間、スタッフは手を止めなくて済みます。
ここで大事なのは、AIが「聞いておしまい」ではない点です。名前・日時・人数を確認しながら聞き取り、通話が終わると予約情報が自動的にデータとして記録されます。
紙のメモに殴り書き→あとで転記→字が読めなくて確認電話——この流れ、心当たりありませんか。ダブルブッキングの原因の大半は「メモの読み間違い」です。AIが直接データにしてくれるなら、そもそも読み間違いが発生しません。
飲食店に限らず、美容室やクリニックなど予約電話が集中する業種ほど効果は大きいです。
AI電話サービスは人間と違い、複数の着信を同時にさばけます。参考として別のサービスの事例になりますが、ティファナ・ドットコムのAI電話対応では同時100件の受電を処理し「話し中でつながらない」が解消されたと報告されています。もしもしAIの同時対応数は公表されていませんが、AI電話である以上、人間ひとりでは対応できない同時着信にも対応できる仕組みです。ランチタイムに電話が3本重なっても、取りこぼしが起きません。
![[シーン] 飲食店の厨房で料理人が調理に集中している横で、カウンターの電話が鳴っているが誰も取りに行かない場面](http://ai-mikata.com/wp-content/uploads/2026/06/autopress-36.webp)
方言や想定外の質問が来たら
ただし「完璧に聞き取る」とは思わないほうがいいです。
方言や訛りが強い地域では、精度が落ちます。「なんでやねん」はAIに通じるのに「なしてや」は通じない問題という検証記事では、関西弁の定番フレーズはわりと通じる一方、東北弁になると聞き取りミスが目立つという結果が出ています。
年配のお客さんが多い地域では、導入前にデモトークで自分の地域の言葉を試しておくのが安全です。
方言が強い地域では聞き取り精度が下がる。導入前にデモトークで自分の地域の話し方を試しておくこと
もうひとつの壁が、台本にない質問です。
お客さん:「今日って混んでます?」
AI:(台本にないため応答できない)
「キャンセル料はかかる?」「駐車場ある?」も同じです。台本に書かれていない情報を、AIが自分の判断で答えることはありません。
このとき、もしもしAIには主に2つの選択肢があります。スタッフの携帯に転送するか、「折り返しお電話します」と案内するか。どちらにするかは導入時に設定しておきます。
かかってくる電話でよく聞かれる内容(予約・営業時間・混雑状況など)を洗い出し、AIが答えられるよう台本に追加しておく。
スタッフの携帯に転送するか、「折り返しお電話します」と案内するか——どちらにするかを導入時に決めておく。
「AIが答えられないときどうするか」を先に決めておくこと。ここが曖昧だと、お客さんが無言の電話口で待たされます。いちばん避けたい事態です。
裏を返せば、かかってくる電話の「よくある質問」を洗い出して台本に落とし込めば、対応範囲はかなり広がります。「電話の8割は予約と営業時間の確認」という店なら、その8割をAIに任せて残り2割だけ人が対応する。この割り切りが、導入をうまく回すコツです。
バイト代から逆算する費用対効果
「便利なのはわかった。で、いくらかかるの?」——ここが本題です。
感覚で「高い・安い」を判断するのではなく、今の電話対応にいくら払っているかを電卓で出してみましょう。比べる相手がはっきりすれば、答えは自分で出せます。
料金プランの内訳
まず「バイトに電話番を任せた場合」の実コストを出します。
最低賃金は地域によりますが、ここでは時給1,100円で計算します。1日3時間、週5日勤務として——
| 項目 | 月額の目安 |
|---|---|
| 基本給(1,100円×3h×22日) | 約72,600円 |
| 交通費 | 5,000〜10,000円 |
| 雇用保険・労災保険 | 数千円 |
| 採用費(求人広告の月割り) | 数千〜1万円 |
| 教育コスト(研修中の時給) | 初月のみ数万円 |
ざっくり合計すると、月8〜10万円。交通費が高い地域や社会保険加入が必要な勤務時間になると、実質12〜15万円に届くこともあります。
しかもこれは「営業時間内の3時間だけ」の話です。閉店後や定休日の電話は取れません。
一方、もしもしAIの料金プランは公式サイト・プレスリリースともに具体的な月額が公開されていません(2026年6月時点)。導入を検討する場合は個別に問い合わせが必要です。
月額料金だけでなく、初期費用も確認しておきましょう。AI電話サービスでは一般的に、初期設定費や電話回線の接続費が別途かかるケースがあります。もしもしAIは台本をAIが自動生成するため台本作成の手間は少なめですが、初期費用の具体額は個別見積りです。
月額が安くても初期費用が高ければ回収に時間がかかります。問い合わせ時に「月額・初期費用・最低契約期間」の3点をセットで聞くのが鉄則です。
ここで押さえておきたいのは、AIの月額料金だけを見て「高い」と判断するのは早いということ。
もしもしAIは24時間365日対応で、同時に複数の電話を受けられます。バイトでは物理的に不可能な「閉店後の予約電話」や「昼のピーク時に3本同時に鳴る電話」にも対応できる。
つまり、今まで取りこぼしていた電話がそのまま売上になる可能性がある——コストだけでなく「取りこぼし防止による増収」も計算に入れる必要があります。
損益分岐点はどこか
料金がわかったら、「うちの店で元が取れるか」はこの式で判断できます。
AIの月額料金 ÷ 1日の電話対応コスト = バイト何日分
先ほどの計算で、バイトの電話番は1日あたり約3,300円(時給1,100円 × 3時間)でした。
問い合わせで月額料金がわかったら、この3,300円で割ってみてください。出た数字が「バイト何日分に相当するか」です。
月22日営業なら、その日数が22を下回るほど得になります。24時間対応と同時着信処理のぶんも、バイトにはない上乗せです。
初期費用がある場合は「初期費用 ÷ 月の削減額」で回収にかかる月数も出しておきましょう。
この式に自分の店の数字を入れれば、感覚ではなく電卓で判断できます。
ただし、ひとつ正直に書いておきます。
月の着信が50件にも満たないような小規模店では、そもそも電話対応に人件費がほとんどかかっていません。店主やスタッフが片手間で取れてしまう量だからです。
こういう店がAIを導入しても、「便利にはなったけど、節約した実感がない」というケースになりがちです。
逆に言えば、「月に100本以上は電話が鳴る」「ランチタイムに電話が取れなくて予約を逃している」「定休日の電話を全部取りこぼしている」——こういった課題がはっきりしている店ほど、費用対効果は出やすいです。
「うちは月に何本くらい電話が来てるんだろう?」と思ったら、まず1週間だけ正の字で数えてみてください。その数字があれば、料金を聞いたときに一瞬で判断がつきます。
導入の流れと注意点
費用の目安がついたら、次は「で、どうやって始めるの?」です。
申し込みから稼働まで
公式のプレスリリースによると、導入は5ステップ・最短2週間で稼働できます。
台本をゼロから書く必要はありません。業務内容を伝えればAIが下書きを作ってくれるので、「予約時に聞く項目はこれでいいか」「営業時間の案内はこの文言でいいか」を確認して手直しするだけです。プログラミングの知識は不要で、管理画面から設定できます。
正式リリース記念として、デモトークの無料作成を受け付けています。自分の店の業務に合わせた応答デモを無料で体験でき、料金の確認もできるので、まず問い合わせてみるのが一番確実です。
なお、着信対応だけでなく発信(アウトバウンド)にも対応しています。予約前日のリマインド電話を自動化する、といった使い方もできます。
稼働したあとの手間も見ておきましょう。メニュー改定や営業時間の変更があれば台本の更新が必要です。もしもしAIはプログラミング不要で設定変更ができるとされていますが、「管理画面の使いやすさ」や「変更時のサポート体制」は導入前のデモで実際に触って確かめておくのが安全です。
季節メニューが変わるたびに台本を直す飲食店や、スタッフのシフトで営業時間が動く店ほど、この「運用のしやすさ」が長期的な満足度を左右します。
今の電話番号はそのまま使えるか
導入を検討する店が真っ先に確認すべきなのが「今使っている電話番号は変わらないのか」です。チラシ、看板、食べログ、Googleマップ——あちこちに載せた番号を変えるのは、それだけで大きなコストと混乱を生みます。
AI電話サービスの導入方式は一般的に2パターンあります。
- 転送方式——既存の電話番号への着信を、自動的にAIの回線へ転送する。お客さんから見ると番号は変わらない
- 新番号方式——AI専用の電話番号が新たに発行される。既存番号との併用や、切り替えが必要になる場合がある
もしもしAIがどちらの方式に対応しているかは、公式サイト上では明記されていません(2026年6月時点)。問い合わせの際に「今の番号をそのまま使えるか」を最初に確認してください。
「あとから聞けばいいか」と後回しにすると、契約後に番号変更が必要とわかって慌てることになりかねません。番号が変わるなら、チラシの刷り直しやWeb掲載情報の修正コストまで含めて判断する必要があります。
AIに任せられない電話
もうひとつ、導入前に必ず決めておくことがあります。「どの電話をAIに任せないか」です。
- クレーム対応——感情的なやりとりにAIは対応できません
- 複雑な価格交渉——台本にない判断を求められます
- 本人確認が必要な手続き——セキュリティ上、人が確認すべきです
- 緊急の問い合わせ——判断の遅れが致命的になりかねません
こうした電話に「お答えできません」で終わるのが最悪のパターンです。先ほど触れた「転送か折り返しか」のルールを、こうした電話にも忘れずに設定しておくこと。感情が入る電話ほど、人間が出る導線が欠かせません。
「定型の電話はAI、複雑な電話は人」。この線引きさえできれば、もしもしAIは十分に頼れる電話番になります。
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