アプリを1本作るのに、普通は数ヶ月かかる。企画を固めて、設計して、コードを書いて、テストして、Apple(アップル)の審査を通す——それだけの工程がある。合同会社AllNewが2026年6月11日に公開した「App Factory」は、その全工程を最短3日で終わらせる。
人間がやることは3回だけだ。「始めてください」と指示を出すこと、リリース直前に最終確認をすること、AIが提案する改善案を採用するかどうか判断すること。その間にある何十もの工程は、すべてAIが動かす。
これは将来の構想ではない。2026年6月時点で、この仕組みからすでに13本のiOSアプリが世に出ている。体重を記録・管理するWeightSnapや、子犬の体重を追跡するPupWeightといったアプリが中心で、実際にApp Store(アップストア)に並んでいる。審査提出まで最短3日、公開まで7日で完了した事例もある。ダウンロード数や収益といった事業上の成果は、AllNewから公開されていない。
さらに、ユーザーからの改善要望を受け付ける専用サイト「POIPOI-STUDIO」も同時に公開された。利用者が「こうしてほしい」と送ったアイデアが採用されれば、最短1週間でアプリに反映される。
AIは何をやっているのか
では、その3日間で、AIは具体的に何をしているのか。
開発から対応まで、全部AI
「どんなアプリが売れそうか」を調べる市場調査から始まり、設計、コードの生成へと進む。その後、Appleが定める審査ルールに照らした確認と実機でのテストを経て、App Storeへの申請と掲載説明文の作成まで行う。人間の手は、この一連の工程に入らない。
リリース後も同じだ。ユーザーから届く問い合わせへの対応も、AIが処理する。
「作る」より「育てる」を自動化
リリースで終わらない点も、この仕組みの特徴だ。ユーザーの声を集め、次の改善へと自動で反映するサイクルが、仕組みとして組み込まれている。AIが「作る機械」ではなく「育て続ける仕組み」として設計されている。
これが広がると何が変わるか
App Factoryのような「AIが指示なしで自律的に仕事をこなす」しくみを巡る市場について、米国の調査会社Gartner(ガートナー)は、2026年の世界規模が約32兆円、前年比139%増になると予測している。
AllNewは今回の実績を踏まえ、企業向けのAI戦略支援も展開するとしているが、その具体的な実績は公開されていない。
問われているのは「AIを使えるか」ではなく、「AIに何をさせるかを決められるか」だ。技術力ではなく判断力が事業の優劣を分ける——アプリ開発で実証されたこの仕組みは、その問いを他の業種にも突きつけることになる。

