ランチの11時半、鍋を振っている最中に電話が鳴る。火を止めて出るか、無視するか——飲食店を回していれば毎日ぶつかる判断です。
この記事では、出られなかった電話がいくらの損失になっているかを数字で示したうえで、月1〜2万円台で始められるAI電話予約サービスの仕組み・費用・導入事例を現場目線でまとめています。累計500万件の電話をさばいたAIサービスも登場しており、もはや大手チェーンだけの話ではありません。
飲食店の予約電話、1本いくら損か
2026年の調査で、飲食店に電話で予約する客は全体の約35%。ネット予約全盛でも、3人に1人以上は電話をかけてきます。
問題は、電話が鳴るタイミングです。
ランチ前の11時台、ディナー前の17時台——仕込みと接客のピークに、予約電話のピークが重なります。ワンオペの店では「ピーク時に3分に1回鳴る」こともあり、少人数で回す店ほど「鳴ってるけど出られない」が常態化しています。無理に出れば、目の前のお客さんへの接客が途切れます。どちらにしても、損をしている状態です。
そして、出られなかった客はかけ直してくれません。
スマホで「近くの居酒屋」と検索し直せば、3秒で次の店が見つかります。電話に出られない→お客さんが来ない→売上が減る。この流れは、想像よりずっと速いです。
試算してみます。客単価5,000円の店で、1日3件の予約電話を取りこぼしたとしましょう。1組平均2名なら、1件の損失は1万円。月20営業日で月30万円の売上が、電話と一緒に消えている計算です。年間360万円——パート1人分の人件費に相当します。
AI電話が出ると、こんな会話になる
月30万円が消えている——そこまではわかりました。ではどうするか。
答えはシンプルで、電話番をAIにやらせます。とはいえ「AIが電話に出る」と言われても、正直ピンとこないですよね。実際のやり取りを見てみましょう。
予約受付の会話フロー
たとえば金曜の夕方、お客さんから予約の電話が入ったとします。
AI「お電話ありがとうございます、居酒屋〇〇です。ご予約でしょうか?」
客「はい、金曜の夜に予約したくて」
AI「ありがとうございます。ご希望の日時と人数を教えていただけますか?」
客「今週金曜の19時、4人で」
AI「6月20日金曜日、19時から4名様ですね。お席を確認します——お取りできます。お名前とお電話番号をお願いします」
客「田中です。090-XXXX-XXXXで」
AI「田中様、6月20日19時から4名様で承りました」
人間のスタッフが出たときと、ほぼ同じ流れです。
ebicaの「AIレセプション」では、「さゆり」という名前のAIスタッフが音声認識(お客さんの声を聞き取る技術)を使って、こうした自然な会話で予約を受け付けています。聞き取った内容は予約管理システム——いわゆるお店の予約台帳に自動で入るので、紙にメモして打ち直す手間も、転記ミスもなくなります。
![[図解] 「お客さんが電話→AIが日時・人数・名前を聞き取り→予約台帳に自動登録」の3ステップを左から右への矢印で示すフロー図](http://ai-mikata.com/wp-content/uploads/2026/06/autopress-41.webp)
聞き取った予約内容は予約台帳に自動登録。紙メモの転記ミスもゼロになる
よくある質問の自動応答
予約だけではありません。飲食店にかかってくる電話には、毎日同じ質問が何度も混ざっています。
「駐車場ありますか?」「子連れOKですか?」「カード使えますか?」——答えはいつも同じなのに、ランチのピーク中にわざわざ手を止めて答えている。あの時間を、AIが丸ごと引き受けます。
よくある質問と回答をあらかじめ登録しておけば、AIが即答してくれます。スタッフの手は一切止まりません。「1件も受電を取りこぼさない環境」が、これだけで整います。
- AI対応:登録済みの回答を即返答(スタッフの手は止まらない)
- 人間が対応:手を止めて毎回同じ回答(1回2〜3分)
客はAI相手で嫌がらないか
「でもAIが出たら客が怒るんじゃ?」——導入を迷うお店がほぼ全員口にする不安です。
結論から言うと、お客さんが嫌がるのは「相手がAIだから」ではなく「用件が済まないから」です。
「金曜19時に4人」と伝えて予約が取れれば、相手が人間かAIかは気にしない——そういう人がほとんどです。
その証拠に、ebicaの「AIレセプション」は累計500万件の電話応対を突破しています。1店舗で1日最大476件をAIがさばいた記録もあります。もしお客さんが嫌がって途中で切っていたら、この数字にはなりません。
500万件の実績は「大半の客がAI相手でも普通に予約を完了している」証拠
もちろん「AIの声だ」と気づいて切る人もゼロではありません。ただ、そういう方はもともとネット予約を使う傾向があるので、心配はいりません。
大事なのは、電話をかけてきた人の用件をきちんと済ませること。それさえできれば、AIかどうかは問題にならないんです。気になる方は実際にAI電話を導入した飲食店の事例もあわせてどうぞ。
全部AIに任せて大丈夫?
便利そうなのはわかった——でも全部任せて平気?
答えは、全部じゃなくて大丈夫です。線引きさえすれば十分回ります。
AI向きの電話5パターン
- 予約受付——日時・人数・名前を聞くだけ
- 予約変更・キャンセル
- 空席確認
- 営業時間・定休日の案内
- 駐車場・アクセスの案内
クレームやアレルギーの込み入った相談だけ、人間に任せればOKです。多くのサービスには転送設定があり、AIが「対応しきれない」と判断したら自動で店のスマホに転送してくれます。
飲食店の電話の大半はこの5パターンに収まります。8割はAI、残り2割だけ人が出る——これが現実的な落としどころです。
うちの店でも始められる?
「AIって大がかりなシステムが要るんでしょ?」——この心配、一番多いんですが、結論から言うと今の電話だけで始められます。
仕組みはシンプルです。お店の固定電話に「転送設定」をかけるだけ。電話がかかってきたとき、AIサービスの番号に自動で回されます。
電話番号は変わりません。電話機もそのまま。回線工事も不要です。スマホかパソコンから管理画面にログインして、早ければ30分で使い始められます。
「でも、予約台帳のソフトなんてうちは入れてないよ?」という個人店も安心してください。サービスによって前提条件が違います。
- IVRy——予約台帳なしで単体で動きます。紙の台帳で管理している店でもすぐ使えます
- トレタ予約番——予約台帳がセットで付いてきます。これを機に紙の台帳を卒業するのもありです
- ebica AIレセプション——食べログやホットペッパーとの空席連携が前提です。グルメサイトに掲載していない個人店は、IVRyかトレタ予約番から検討してみてください
どのサービスも無料トライアルを用意しているところが多いので、まず1週間試してみるのが一番早いです。
個人情報の扱いと転送設定
AI電話が扱う個人情報は名前・電話番号・来店日時——紙の予約台帳と同じ範囲です。通話録音はサービス側で暗号化して保管されます。GDPR(ヨーロッパの厳格な個人情報保護ルール)に対応するサービスも増えており、走り書きの紙メモよりずっと堅い管理体制です。
心配なら「AIが一次受け→人間が折り返す」設定にもできます。AIが日時と人数だけ聞いて「折り返しご連絡しますね」と伝え、確認電話はスタッフがかける方式。個人情報を渡す範囲を最小限に絞れます。
「お店にAIが電話してくる」サービスは別物
ひとつ知っておいてほしい話があります。「AI電話予約」で検索すると、この記事で紹介しているものとはまったく別のサービスがヒットすることがあります。
この記事のAI電話は、お店がAIで電話を受けるサービスです。お客さんがかけてきた電話に、AIが代わりに出てくれます。
一方、「オートリザーブ」のように、お客さんの代わりにAIがお店に電話をかけてくるサービスもあります。ネットで依頼するとAIの自動音声がお店に直接電話して予約を取る仕組みで、飲食店側から「一方的にAI音声で電話がかかってくる」と苦情が出ているケースが報じられています。
名前は似ていますが、目的も仕組みもまったく別物です。この記事で紹介しているのは「自分のお店の電話番をAIにする」サービスなので、混同しないようにしてください。
飲食店のAI電話は結局いくらか
安心材料が揃ったところで、最後の壁は「で、いくらなの?」です。
飲食店向けAI電話の相場は、月額1〜2万円台に、使った分だけかかる通話料が乗るイメージ。冒頭で試算した「月30万円の取りこぼし」と比べれば、投資の回収は初月から始まります。
- 取りこぼしの損失:月30万円
- AI電話の費用:月1〜2万円台 → 投資回収は1ヶ月目から
![[比較図] 左側「電話取りこぼしの損失:月30万円」、右側「AI電話の費用:月1〜2万円」を天秤で対比した図。右側が大きく傾いている](http://ai-mikata.com/wp-content/uploads/2026/06/autopress-40.webp)
店舗規模別のおすすめサービス
「どれを選べばいいか」は、お店の規模で決まります。
| サービス | 料金の目安 | 向いている店 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| IVRy | 月2,980円〜+通話料 | 個人店・テイクアウト中心 | 予約台帳なしでOK。最安クラス。設定は約30分 |
| トレタ予約番 | 成果報酬型(予約成立1件ごとに課金。月額基本料は要問合せ) | 個人店〜中規模 | 予約台帳がセット。電話が少ない月は費用も低く抑えられる |
| ebica AIレセプション | 月1〜2万円台 | 中規模〜多店舗 | 食べログ・ホットペッパーと空席を自動連携 |
| LINE AiCall | 月額数万円〜(店舗数・通話量による個別見積もり) | チェーン・多店舗 | LINE公式アカウントと統合。多店舗の一括管理に強み |
個人店ならIVRyかトレタ予約番。月3,000円以下から始められる
個人店なら、IVRyかトレタ予約番で十分です。トレタ予約番は予約台帳と完全連携しており、予約が成立した分だけ課金される成果報酬型です。月に電話予約が10件の店と50件の店で費用が変わるので、電話が少ない個人店ほど無駄が出にくい構造になっています。具体的な1件あたりの単価はプランにより異なるため、公式サイトで見積もりを取ってみてください。
食べログやホットペッパーに掲載している中規模店なら、ebicaのAIレセプションが有力候補です。グルメサイトの空席データと自動で同期するので、ダブルブッキング(同じ時間に予約が重なること)を防げます。
LINE AiCallはLINE公式アカウントとの統合が最大の強みです。複数店舗の電話応対をまとめて管理できるため、チェーン展開している企業に向いています。料金は店舗数や通話量で変わる個別見積もりのため、1〜2店舗の個人店にはオーバースペック(必要以上に高機能で割高)になりがちです。
初期費用は多くのサービスで数万円以内。設定も30分〜1時間で終わるので、「来週から使いたい」に応えられます。
補助金で実質いくらになるか
ここが、他の比較記事ではまず触れられていない話です。
経済産業省・中小企業庁が実施する「デジタル化・AI導入補助金2026」(旧IT導入補助金)を活用すれば、AI電話の導入費用を大幅に抑えられます。飲食業で常時雇用する従業員が5人以下の小規模事業者なら、補助率は最大4/5——つまり自己負担は2割です。補助上限は最大450万円で、AI電話サービスは「AI導入推進枠」の対象になり得ます。
計算してみましょう。
IVRyの月額2,980円なら、補助適用後は実質600円程度。月1万円のサービスでも実質2,000円です。月額1,000円台で、24時間365日の電話番が手に入ります。バイトの時給1時間分にもなりません。
冒頭の「月30万円が消えている」を思い出してください。この金額で迷う理由は、もうないはずです。
まずは無料トライアルで手応えをつかみましょう。
申請受付のスケジュールは年度内に複数回設けられるため、最新の締切は公式サイトで確認してください。補助金の具体的な申請手順は「デジタル化・AI導入補助金の活用ガイド」で詳しく解説しています。
良ければ補助金を申請して本導入——この順番が一番確実です。



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