北海道中央バスは2026年7月1日から、札幌発着の高速バス4路線でAI(人工知能)を使った運賃の変動制を導入する。同じ路線の同じ便でも、買うタイミングや購入方法によって値段が変わる仕組みだ。飛行機やホテルでは当たり前になったこの方式が、路線バスにも来た。
7月から運賃はどう変わる
札幌発の主要4路線が対象
新制度が適用されるのは4路線だ。「スターライト釧路号」(札幌〜釧路)、「ポテトライナー」(札幌〜帯広方面)、「ドリーミントオホーツク号」(札幌〜網走方面)、「高速はこだて号」(札幌〜函館方面)。いずれも予約制の都市間高速バスで、7月1日以降に出発する便から新運賃が適用される。
運賃はAIが便ごとの需要を予測し、自動で変動させる。その振れ幅は小さくない。スターライト釧路号を例に取ると、現在は一律6,000円だが、新制度では4,290円から7,200円の範囲で動く。現行より1,710円安くなる日もあれば、1,200円高くなる日もある。
他の3路線については、現行運賃は帯広方面が〔要確認〕円、網走方面が〔要確認〕円、函館方面が〔要確認〕円。新制度での上限・下限はまだ公表されていない。「値上げ」ではなく「変動」だ。
早期Web予約が安く、窓口は常に上限
ただし、安い運賃で乗れるのはインターネット予約かローソンでの購入に限られる。窓口や電話で予約すると、どの便も常に上限価格が適用される。スターライト釧路号なら7,200円——現行の6,000円より2割高い水準だ。
早めにネットで予約する人は今より安く乗れる可能性がある。一方、当日に窓口へ来る人は常に最高額を払う。ネットを使わない人には、そもそも選択肢がない。この差が、バス会社が狙う「行動の変化」そのものだ。混む時期を避けて余裕のある日に乗ってもらうために、価格差を誘導装置として使う設計になっている。
シニア割引や障害者割引など既存の割引制度が新運賃体系のもとでどう扱われるかについては、現時点で同社から明確な説明は出ていない。
新制度での予約受付は2026年5月1日に始まる。なぜ、ここで一律運賃という長年の慣行を変えるのか。
なぜ今、バス会社が動いたのか
運転手が足りず増便できない
北海道中央バスの従業員数は、2015年の1,740人から2024年には1,379人へと10年で約2割減った(同社発表)。平均年齢は同じ期間に46.6歳から53.0歳へと上がっている。採用難と高齢化が同時進行し、組織はじわじわと縮んでいる。
運転手が足りなければ、需要が集中しても臨時便を出せない。供給を増やす正攻法が使えないなら、需要の側を動かすしかない。価格を変動させる狙いはそこにある。
2024年12月には全路線の約3割にあたる68路線で平均2割の運賃値上げを実施した。コスト増への対応だったが、一律の引き上げでは混雑の偏りは解消しない。混む便はそのまま混み、空く便はそのまま空いた。次の手が必要だった。
4路線は9社の共同運行
対象の4路線は、北海道中央バスが単独で運行しているわけではない。阿寒バス、くしろバス、JR北海道バスなど計9社が各路線を共同で担っており、今回は全社が同じ新運賃体系に移行する。同じ便でも会社によって値段が違う、という事態は起きない。

