AIを「知っている」人は70%を超える。だがソフトバンクの調査では、57%がまだ一度も使ったことがなく、使わない理由の34%が「使い方がわからない」だった。4月17日、ソフトバンクはその層に向けた無料サービスを静かに始めた。
「だれでもAI」──ボタンを押すだけでAIが動く無料サービス
アカウント不要、むずかしい入力も不要
サービスの名前は「だれでもAI」。2026年4月17日に提供が始まった。
アカウント登録もパスワードも要らない。ブラウザを開けばすぐ使える。
AIを使うには通常、やりたいことを文章で入力する必要がある。「〇〇の画像を生成して」「英語に訳して」といった具合だ。だれでもAIはその入力を不要にした。画面に表示された画像を選んだり、ボタンを押したりするだけでAIが動く。オリジナルキャラクター「AICE(アイス)」が操作の手順を案内してくれるため、初めての人でも迷わない設計だ。
画像生成・音楽・リアルタイム通訳を無料で体験できる
できることは幅広い。写真をもとに画像を作る「画像生成」、好みに合わせた音楽を作る「音楽生成」、外国語をその場で日本語に変換する「リアルタイム通訳」など、いずれも無料で使える。
ソフトバンクのAndroidスマホを使っているなら、ホーム画面にあった「5G LAB」のアイコンが自動的に「だれでもAI」に切り替わる。アプリをダウンロードする手間も、設定を変える必要もない。
その先にある「Natural AI Phone」──アプリを探さなくていいスマホ
「だれでもAI」が今のスマホをそのまま使いながらAIを身近にする試みだとすれば、同じ日に発表されたもう1つの製品は、スマホの使い方そのものを変えようとしている。
4月24日に発売される「Natural AI Phone」だ。端末を作ったのはFCNT、AIの仕組みを担当したのは米スタートアップのBrain Technologies。この2社による製品は世界初で、ソフトバンクが1年間独占で販売する。
「何がしたい?」と話しかけると、AIが画面を作って動いてくれる
これまでのスマホの使い方はこうだ。LINEを使いたければLINEアプリを開く。地図を見たければマップを開く。お店を予約したければ別のアプリを探して開く。やりたいことが増えるたびに、自分でアプリを見つけて切り替え続ける。
Natural AI Phoneは違う。「何がしたいか」を話しかけると、AIが画面を組み立てて動いてくれる。
たとえばLINEで友人からランチに誘われたとする。このスマホなら、AIが自動でカレンダーを確認し、空いている時間帯を見つけ、近くの店を予約し、LINEで返信まで済ませる。アプリを切り替える操作は一切ない。
Brain TechnologiesのCEOはこう話す。「2007年にiPhoneが登場して以来、19年間、人々は同じアプリ操作を続けてきた」。Natural AI Phoneはその前提を変えようとしている。
使えば使うほど先回りしてくれるパーソナル機能
端末には、会話の内容や操作の履歴から使う人の好みや行動パターンを学習する仕組みが搭載されている。使い続けるうちに、先回りした提案ができるようになる。
本体側面には物理的な「AIボタン」がある。1回押すとGemini(グーグルのAIサービス)が起動し、2回押すと今見ている画面の情報をAIが記憶する。
対応アプリはLINE・Gmail・Amazonなど9種類、データは日本国内に限定
リリース時点でAIが連携できるアプリは、LINE・Gmail・Googleマップ・Googleカレンダー・YouTube・食べログ・Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピングの9種類。今後追加される予定だが、現時点でAIが直接連携できるのはこの9種類に限られる。
学習データは端末内と日本国内のクラウドのみで処理される。外部のAIサービスの学習には使われない、とFCNTは説明している。
9万円超の端末が実質24円になる仕組み
Natural AI Phoneの定価は9万3,600円だ。「高い」と感じた人は正しい。だが実際の支払い総額は24円になる。
仕組みはこうだ。ソフトバンクには「新トクするサポート+」という分割払いのプログラムがある。2年後に端末を返すことを前提に、その時点での回収価値分をあらかじめ割り引いた金額だけを支払う仕組みだ。これに他社から乗り換える「MNP」の割引を組み合わせると、月1円×24回——合計24円の計算になる。
端末は2年後に返す。その前提で成り立つ価格だが、「2年間使って24円」という事実は変わらない。
さらに端末を購入すると、AIサービスの無料特典がつく。
- 質問すると関連情報をAIがまとめて答えてくれる検索サービス「Perplexity Pro」が6カ月無料
- スマホでチラシやSNS投稿のデザインが作れる「Canva Pro」が3カ月無料
- AI英会話アプリ「スピークバディ」は12カ月プランが30%オフ
いずれもソフトバンク・ワイモバイル・LINEMOのユーザーが対象だ。
端末を安く広め、AIサービスごと使わせる。「だれでもAI」を無料で始め、Natural AI Phoneを実質タダで手に入れられる状況を作る——ソフトバンクが描くのは、価格の壁を取り除くことでAIの入口を一気に広げる絵図だ。「AIを知っているが使っていない」57%の人たちが、次にどう動くかが問われている。

