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写真台帳AIで本当に楽になる?現場監督が導入前に確認すべきこと

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工事写真を撮るのは一瞬です。でも、そのあとの整理が終わらない。
パソコンに取り込んで、エクセルに貼り付けて、工種ごとに並べ替えて、コメントを入力して——。NITACOの調査によると、この作業だけで月40時間を費やしている現場監督も珍しくないそうです。この記事では、その写真整理を「撮るだけで終わり」にすると話題の写真台帳AIについて、宣伝文句をそのまま信じず、何ができて何ができないのかを正直に整理しました。

目次

「月40時間の工事写真整理がゼロ」は本当か

「月40時間の写真整理が、撮るだけでゼロに」——2025年にNITACOがβ版として公開した写真台帳AIのキャッチコピーです。
インパクトのある数字ですが、これをそのまま真に受けるのは危険です。結論から言うと、条件が揃って最大80%削減。「ゼロ」にはなりません。

まずは、このツールが実際に何をしてくれるのかを見ていきます。

写真台帳AIがやってくれること

写真台帳AIは、現場で撮った工事写真を「撮るだけ」で台帳にまとめてくれるツールです。
仕組みはシンプルで、工事写真に写っている黒板の文字をAIが自動で読み取り、その内容をもとに工種(くいうち、鉄筋組立、コンクリート打設など工事の種類)ごとに写真を分類します。
分類が終われば、写真台帳のPDFをワンクリックで出力できます。

つまり、これまで人間がやっていた以下の作業をAIが肩代わりしてくれます。

STEP
黒板の読み取り

手書き・プリントどちらもAIが文字を認識

STEP
工種ごとの分類

黒板の内容から自動で仕分け

STEP
コメントの入力

黒板情報をもとに台帳用コメントを生成

STEP
台帳PDFの出力

ワンクリックで写真帳を生成

[図解] 「現場で撮影」→「AIが黒板を読み取り」→「工種ごとに自動分類」→「台帳PDFをワンクリック出力」の4ステップを左から右に矢印でつなぐフロー図

気になるのは「スマホだけで使えるのか、パソコンも必要なのか」という点です。
写真台帳AIはWebアプリ(ブラウザで開いて使うサービス)なので、専用アプリのインストールは不要です。スマホのブラウザから写真をアップロードし、台帳PDFの出力までスマホ上で完結できます。
現場にパソコンを持ち込む必要はありません。ただし、台帳の細かい修正や大量の写真を一覧で確認する作業は、画面の大きいパソコンのほうがやりやすいです。

デジコンの紹介記事によると、月40時間超かかっていた写真整理・台帳作成を最大80%削減できるとされています。
ただし、ここで注意したいのは「最大80%」という表現です。100%ではありません。

AIが代替できる作業とできない作業

工事写真の整理を5つの工程に分けて考えると、AIが効くところと効かないところがはっきりします。

工程作業内容AIが代替できるか
①撮影現場で写真を撮る✕(人間が撮る)
②取り込みスマホ・カメラからデータを移す△(アプリ連携で省力化)
③分類工種ごとにフォルダ分け◎(黒板読み取りで自動化)
④台帳作成エクセルや帳票に貼り付け・コメント記入◎(PDF自動生成)
⑤チェック・修正抜け漏れ確認・発注者への提出判断✕(人間が判断)

AIが大きく時間を削ってくれるのは③と④、つまり「分類」と「台帳作成」の部分です。
この2つは写真整理の中でも最も手間がかかる工程なので、ここが自動化されるインパクトは確かに大きいです。

ただし、①の撮影と⑤のチェック・修正は人間がやるしかありません。
特に⑤は、提出先(発注者や元請け)の求めるフォーマットに合っているか、写真に過不足はないかを確認する作業で、ここを省略するわけにはいかないです。

写真台帳AIは「確認係を楽にするツール」であって「全自動ツール」ではない

「分類と台帳作成をAIに任せて、人間は確認に集中する」——これがこのツールの正しい使い方です。撮影と最終チェックは引き続き人間の仕事です。

では、「最大80%削減」はどんな条件で達成できるのか。
NITACOのnote記事に掲載されている実例では、月32時間の削減が報告されています。年間にすると約384時間です。
これは十分に大きな数字ですが、「40時間→ゼロ」ではなく「40時間→8時間」くらいのイメージが現実的です。

しかも、この削減幅にはいくつか前提条件があります。

  • 黒板がきれいに読める → 手書きが極端に汚い、雨で滲んでいる、影で半分見えないといったケースではAIの読み取り精度が落ちます
  • 現場にネット環境がある → クラウドで処理するため、電波の届かない山間部やトンネル内では使えない場面も
  • 工種が標準的な分類に収まる → 特殊工法や独自の仕分けルールがある現場では、自動分類がうまくハマらないことがあります

3つの条件が揃えば最大80%削減。揃わなければ、削減幅はもっと小さくなります。

もう一つ押さえておきたいのが、写真台帳AIはまだβ版(正式リリース前のお試し版)だということです。料金体系や電子納品対応も未確定の段階なので、「今の条件がずっと続く」とは思わないほうがいいです。

写真台帳AIは「写真整理を全自動にする魔法のツール」ではありません。「分類と台帳作成をAIに任せて、人間は確認に集中する」ためのツールです。
そう理解した上で、では既存の工事写真アプリと何が違うのかが気になるところです。

蔵衛門・PhotoManager・Cheezと何が違うのか

工事写真アプリの定番は「蔵衛門」と「PhotoManager」。どちらも10年以上の実績があり、すでに使っている方も多いはずです。
AI読み取り系ではCheezが先行しており、自治体での導入実績もあります。写真台帳AIは後発ですが、それぞれ方向性が違います。

機能・価格・対応フォーマット比較表

スクロールできます
蔵衛門(ルクレ)PhotoManager(ワイズ)Cheez写真台帳AI(NITACO)
対応OSWindows/iOS/AndroidWindows中心iOS/Android(専用アプリ)Webアプリ(スマホブラウザ対応)
黒板の扱い電子小黒板(アプリ内で入力)電子小黒板対応手書き黒板をAI読み取り+電子黒板も対応手書き・プリント黒板をAIが読み取り
台帳出力形式Excel/PDFExcelExcel/PDFPDF
価格帯年間ライセンス制(数万円〜)買い切り+保守(数万円〜)月額制(要問い合わせ)β版のため未定
AI自動分類電子黒板ベース手動仕分けが基本AI読み取り+自動分類黒板読み取りで自動
電子納品対応対応対応対応未確定
台帳作成の削減率90%以上削減の実績あり最大80%削減

ここで注目してほしいのが「黒板の扱い」「電子納品対応」の違いです。

蔵衛門やPhotoManagerは、そもそも黒板をアプリ内で電子的に入力する前提で設計されています。つまり、最初からデジタルで入力するので「読み取る」必要がありません。
一方、写真台帳AIとCheezは「現場で手書きした黒板をそのまま撮る」スタイルです。手書き派の現場にはこちらのほうが馴染みやすいですが、読み取り精度はAI頼みになります。

Cheezと写真台帳AIを比べると、Cheezのほうが一歩先を行っている状況です。Cheezは専用アプリがあり、電子納品にも対応済み、台帳作成時間90%以上の削減実績を公表しています。価格は月額制で公式サイトからの問い合わせが必要ですが、すでに正式版として提供されている点が大きな違いです。
写真台帳AIを選ぶ理由があるとすれば、専用アプリのインストールが不要でブラウザだけで使える手軽さです。ただし、電子納品対応が未確定であることを考えると、現時点では機能面でCheezに分がある印象です。

公共工事の電子納品に対応しているか

公共工事では、完成時に写真データを「電子納品」という決まった形式で役所に提出する必要があります。根拠となるのは国土交通省の「デジタル写真管理情報基準」で、JPEGファイルとXML形式の管理データをセットで提出するルールが定められています。各地方整備局や自治体が独自の運用ルールを設けていることもあるので、自分の現場がどの基準に従うかは発注者に確認が必要です。

ツール電子納品対応備考
蔵衛門◎ 対応国交省・各自治体基準に長年対応。改ざん検知機能も搭載
PhotoManager◎ 対応国交省基準対応。官公庁での採用実績が多い
Cheez◎ 対応デジタル写真管理情報基準に対応
写真台帳AI不明β版のため電子納品対応は未確定

この差は大きいです。
公共工事がメインの現場であれば、電子納品に対応していないツールは実質使えません。蔵衛門とPhotoManagerは長年の実績があり、各自治体のフォーマットにも細かく対応しています。Cheezも電子納品に対応しているため、AI読み取り系でかつ公共工事対応を求めるならCheezが現実的な選択肢になります。
写真台帳AIは現時点でこの対応が明示されていないため、公共工事の現場でいきなりメインツールとして使うのはリスクがあります。

逆に言えば、民間工事で「とにかく写真整理の手間を減らしたい」という現場であれば、電子納品の縛りがない分、写真台帳AIを試す価値は十分あります。
では、実際に使い始めてから困らないために、具体的な注意点を見ていきます。

導入前に知っておくべき3つの注意点

ここからは、「使い始めてから困る」パターンを3つ整理します。どれも事前に知っていれば回避できることばかりです。

黒板読取が苦手なケース

写真台帳AIの核は、黒板の文字をAIが自動で読み取る機能(いわゆるAI-OCR=画像から文字を拾い出す技術)です。
この読み取り精度が、そのまま台帳の仕上がりを左右します。

問題は、AIが万能ではないということです。
NITACOのプレスリリースでは「手書き・プリントどちらも読み取り可能」とされていますが、これには条件があります。

  • 泥や雨で黒板が汚れている → 文字がかすれていると、AIは読めません
  • 文字が小さすぎる → スマホで撮ったとき文字が潰れるサイズだと認識できない
  • 斜めから撮影している → 正面から撮らないと文字が歪んで誤読の原因に
  • 手書きの癖が強い → 崩し字や走り書きはAIが最も苦手とするパターンです

逆に言えば、印刷タイプの黒板(プリント黒板)であれば精度はかなり安定します。
手書き派の方は「丁寧に・大きめに・正面から撮る」の3点を意識するだけで、読み取りミスはぐっと減ります。

回避策:印刷黒板を使う、または「丁寧に・大きめに・正面から撮る」を徹底する

もう一つ現実的な対策として、最初の数十枚だけ試し撮りしてAIの読み取り結果を確認する方法があります。
自分の現場の黒板・筆跡・撮り方でどこまで認識できるか、実際に見てから判断しても遅くはないです。

料金・サポートがまだ固まっていない

β版である以上、今の利用条件は「お試し価格・お試し仕様」です。正式版への移行時に変わる可能性があるものを整理しておきます。

正式版で変わる可能性があるもの
  • 月額料金 → 正式版では数千円〜数万円になる可能性
  • サポート体制 → トラブル時にすぐ助けてもらえるとは限らない
  • データの引き継ぎ → β版で保存した写真や台帳データが、正式版にそのまま移行できるかも未確定
  • 機能の変更 → 今ある機能がなくなったり、操作方法が変わる可能性もゼロではない

β版の条件をベースに年間の予算計画を組まないこと。これだけは押さえておいてください。

正式版のリリース時期はNITACOから公表されていません(2026年4月時点)。まず1現場で小さく試しつつ、正式版の発表を待って本格導入を判断する——この二段構えが現実的です。NITACOのプレスリリースや公式発信をチェックしておけば、条件が確定したタイミングで動けます。

ネット環境がない現場での制約

写真台帳AIはクラウド型のサービスです。
つまり、撮った写真をインターネット経由でサーバーに送り、AIが処理して結果を返す仕組みです。

ということは、ネットに繋がらない現場ではそもそも使えません

建設現場は街中とは限りません。山間部のダム工事、地下の管路工事、トンネル内の補修——こうした現場ではスマホの電波すら入らないことがあります。
さらに、工事写真は1枚あたり数MBになることも多いので、電波が弱い場所ではアップロードに時間がかかり、実質的に使い物にならないケースもあります。

対処法としては、以下を事前に確認しておくことです。

  • 現場でスマホの4G/5Gが安定して入るか → 実際に現場で速度テストしてみる
  • Wi-Fiルーターの持ち込みは可能か → モバイルWi-Fiで対処できる現場もある
  • テザリングで代用できるか → スマホのデータ容量に余裕があれば選択肢に

導入を決める前に、まず現場でスマホの電波状況を確認する。これが最初のチェック項目

もし現場の電波状況が不安定なら、写真台帳AIの導入は見送って、オフラインでも使える蔵衛門やPhotoManagerを選ぶほうが現実的です。
ネット環境の確認は、ツールの良し悪し以前の話です。ここをクリアできるかどうかが、導入判断の最初の分岐点になります。

Excel台帳から乗り換えるには何をすればいいか

3つの注意点を確認した上で「それでも試したい」と思えたなら、始め方はシンプルです。いきなり全面移行する必要はありません。

新規の1現場だけ写真台帳AIを使い、今のExcel台帳もそのまま並行で続ける。これなら最悪AIがうまく動かなくても、元のやり方が残っているのでリスクはゼロです。

既存のExcelデータを移す作業も不要です。過去の台帳はそのまま、次に始まる現場から試せばいいだけです。

やることはシンプルです。

STEP
現場の電波を確認する

スマホで速度テスト。不安定なら候補から外す

STEP
黒板を数十枚試し撮りする

AIの読み取り精度を自分の目で見る

STEP
NITACOのプレスリリースで最新情報を確認する

問い合わせ先が明確かもチェック

STEP
1現場・1か月だけ使ってみる

Excel台帳と並行運用。ダメなら元に戻すだけ

公共工事で電子納品が必要な現場は、写真台帳AIの対応が明示されるまでは蔵衛門やCheezを使うほうが安全です。

民間工事で「とにかく写真整理の手間を減らしたい」なら、試す価値は十分あります。まずは小さく始めて、自分の現場に合うかどうかを見極めてください。

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