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「AI特許ロケット」世界170ヶ国対応 特許情報を常時自動把握

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2026年4月13日、東京大学松尾研究室発のスタートアップ・エムニが、特許データ大手のLighthouse IPとの提携を発表した。専門家が何週間もかけていた特許調査が、最短10分で終わるようになる。

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知財調査、数週間から10分へ

特許調査とは、新製品や新技術を世に出す前に「すでに似た発明が特許を取られていないか」を確認したり、競合他社がどんな技術を開発しているかを把握したりする作業だ。事業上のリスクを避けるためにも、開発の方向性を決めるためにも欠かせないプロセスである。

ただ、これまでこの調査は「専門家の職人仕事」だった。弁理士(特許に関する専門国家資格者)などが膨大な特許文献を手作業で精査し、分析レポートをまとめるまでに数週間から数ヶ月かかることも珍しくなかった。その背景には、特許が国ごとに別々の機関で管理されているという事情がある。日本は特許庁、米国はUSPTO(米国特許商標庁)、欧州はEPO(欧州特許庁)——それぞれが独自のフォーマットと言語でデータを持つ。世界を横断して調べるには、複数のデータベースを個別に渡り歩き、言語の壁を越え、フォーマットの違いを解読するところから始めなければならない。専門知識がなければ、データを「集める」段階で詰まる。

エムニが提供する「AI特許ロケット」はその常識をひっくり返す。日本語で質問を入力するだけで、AIが特許文書を横断的に分析してレポートを自動生成する。作業時間は最短10分——従来に比べて約99.9%の削減だ。なぜそれが可能なのか。答えは、今回の提携によって実現したデータの規模と鮮度にある。

世界170ヶ国のデータが常時自動更新

今回エムニが提携したのはオランダに本社を置くLighthouse IP。英クラリベイトのDerwent InnovationやPatSnapなど複数の大手が競合する特許データ市場で、カバレッジの広さを強みとする会社だ。

この提携で「AI特許ロケット」が得たデータは、3つの層で成り立っている。

データ層カバレッジ内容
書誌データ170の国・機関誰が、いつ、何を出願したかという基本情報
全文データ83の国・機関発明の詳しい内容そのものを参照できる
法的ステータス125の国・機関特許が現在も有効か失効しているかをリアルタイムで確認できる

これらを組み合わせることで、エムニは「世界の主要な特許情報をほぼすべて押さえた状態」と説明する。

そしてこのデータは「常時自動更新」される。調査のたびに担当者が各国のデータベースを手動で集め直す——その手間自体がなくなった。

経営判断に特許情報を使える時代へ

特許庁が企業向けに実施した調査によると、IPランドスケープ——特許情報を地図のように俯瞰し、競合の技術動向や自社のポジションを経営判断に活かす分析手法——の必要性を認識している企業は多い一方で、実際に「実施できている」と答えた企業は2割に満たなかった。知財部門を持たない多くの企業にとって、調査プロセスの複雑さが高い壁になっていた。

AI特許ロケットはその壁を下げる設計だ。従来の特許検索では「検索式」——AND・ORなどの条件を組み合わせた専門的な命令文——を組み立てる知識が不可欠だった。このツールはそれを不要にした。担当者が日本語で問いかければ、AIが特許文書を横断的に分析して答える。エムニによると、試験導入した化学メーカーのダイセルでは特許調査レポートの作成時間を大幅に短縮できたとしているが、具体的な短縮率や比較条件は公表されていない。住友電気工業、デンソー、東京ガスの3社も、エムニがR&D戦略や競合分析での活用企業として名前を挙げている。

現時点でエムニが公開している導入事例は大企業に限られており、価格体系や対象ユーザーの詳細は公表されていない。

ツールは整った——実施率2割未満の現実

知財部門の専門家が担ってきた調査が、経営企画や研究開発の担当者にも開かれつつある。ツールは整った——だが特許庁の調査が示す「2割未満」という現実は、まだそこにある。

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