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AI特需で老舗化学メーカーが最高益、めっき液がHBM製造を支える

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神戸に本社を置く石原ケミカルは、創業126年の老舗化学メーカーだ。金属の表面を薬品で処理する製品を長年手掛けてきた会社が、2025年3月期に過去最高益を叩き出した。原動力はAIチップの製造に欠かせない「めっき液」だ。

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AI特需で最高益、めっき液がHBMを支える

2025年3月期:売上高14%増・営業利益46%増で創業最高益

2025年3月期の売上高は前年比14%増の約236億円。だが数字が際立つのは利益だ。営業利益(本業のもうけ)は46%増の34億円と、売上の伸び率の3倍以上のペースで膨らみ、会社創業以来の最高益を更新した。

化学製品の製造には工場や設備が必要で、それを維持するコスト(固定費)は売上が増えても大きくは変わらない。そこに利幅の厚い特殊製品の需要が急増すると、増えた売上のほぼそのままが利益に乗ってくる。今期はHBM向けという高単価・高付加価値の製品群が売上増を牽引したことで、利益の伸びがより鮮明になった。

利益をここまで押し上げたのが、特殊な「めっき液」だ。めっき液とは、金属の表面に別の金属を薄くコーティングする液体のこと。アクセサリーの金メッキも同じ原理だ。石原ケミカルが手掛けるのは、半導体チップを縦に何層も積み重ねて電気的につなぐ接合部に使う製品で、高い純度と精度が求められる。

この積み重ね構造を持つ半導体が「HBM」(高帯域幅メモリー)だ。ChatGPTのような生成AIを動かすには、膨大なデータを絶え間なく高速処理する必要がある。しかし1枚のメモリーチップでは処理が追いつかない。そこで開発されたのが、DRAMと呼ばれるメモリーを何層も縦に積み重ねて大容量・高速を実現した構造——それがHBMである。

石原ケミカルのめっき液は、世界最大のHBMメーカーである韓国のSK Hynixをはじめ、世界トップクラスのメモリーメーカーが採用している。AI向け半導体の需要が急拡大するにつれ、HBMの注文も、それを支えるめっき液の注文も「特需」ともいえる勢いで増えた。

HBM市場の成長規模について、半導体市場調査会社TrendForceは2026年の世界HBM市場が前年比58%増の546億ドル(約8兆円)規模に拡大すると予測している。AIへの投資が続く限り、この追い風は石原ケミカルにとっても続くことになる——そう判断してのことか、同社はこの流れに乗って積極策に出ている。

7期連続増配、海外拠点への集中投資

来期(2026年3月期)も増収増益を見込む。会社予想は売上高245億円、営業利益35.1億円。最高益を更新した今期の勢いをそのまま維持する想定だ。株主への配当も年44円(前期は40円)と引き上げ、7期連続の増配を予定している。

さらに先の目標を示すのが、2026年4月に発表した新たな中期経営計画だ。最終年度(2028年3月期)に売上高約293億円・営業利益約48億円を掲げた。今期の水準から利益をさらに約4割上積みする計算になる。ただしこれは会社が掲げる目標値であり、半導体市場の動向次第では大きく変わりうる。

目標達成に向けた「攻め」の柱が、海外拠点への集中投資だ。台湾支店を次世代HBMへの対応拠点として機能を強化し、現地メーカーとの取引拡大を急ぐ。中国・上海には約7.5億円を投じて初の自社工場を2025年10月に設立した。2026年内の操業開始を予定しており、AI向け半導体の生産が集中するアジアで供給体制を一気に整備している。

半導体一本足でない、カーケア事業が安定を支える

一方で同社は、半導体以外の安定収益も大切にする。事業は大きく「表面処理薬品」(半導体向けめっき液を含む)と「カーケア製品」の2本柱で構成される。自動車向けエアコンクリーナーや新車向けコーティング剤が国内のカーディーラーや自動車メーカーに採用されており、景気の波に左右されにくい収益をもたらしている。同社はこの構造を「全天候型経営」と呼ぶ。半導体市場が冷え込んでも倒れない足場を持ちながら、市場の追い風には乗り切る——攻守を組み合わせた判断に、126年の老舗らしい計算が見える。

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