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経済産業省・IPA、「AIに必要なスキル」の国家基準を2年ぶり更新

経済産業省・IPA、「AIに必要なスキル」の国家基準を2年ぶり更新
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経済産業省とIPA(情報処理推進機構)は2026年4月16日、「デジタルスキル標準(DSS)ver.2.0」を公表した。DSSとは、企業がどんなデジタル人材を育てればいいかを国が示した基準のことだ。2022年の策定以来、初めての大規模な改訂となる。

DSSには大きく2つの柱がある。一方は、データ分析やシステム設計を担う「デジタル専門職」向けの基準。もう一方は、デジタルに詳しくない一般の社員も含む「全社員」向けの基準で、こちらは「DXリテラシー標準(DSS-L)」と呼ばれる。今回の改訂では、この両方が書き換えられた。

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政府がAI時代の「必要スキル」を大幅刷新、2年間で何が変わったか

刷新を迫ったのは、ChatGPTに代表される生成AIの急速な普及だ。この2年で企業はAIを「試す段階」から「ビジネスの仕組みそのものを変える段階」へと移行を求められた。今回の改訂では、IT化の延長にある従来のDX(デジタル化)を超え、AIを使って事業を根本から変革する「AX(AIトランスフォーメーション)」という考え方が全体の軸として据えられた。2022年当時の基準では、そこまでの変化を想定していなかった。

IPAの「DX動向2025」によると、日本企業の85.1%がDXを推進する人材の不足を感じている。今回の改訂で、その育成の土台となる国の基準がAI時代仕様に書き換えられた。では、具体的に何が変わったのか。

AIを使うには「データを整える力」が必要になった

「データを整える専門職」が国基準に初登場

生成AIは、与えられたデータをもとに回答を生成する。渡すデータが不完全なら、返ってくる答えも不正確になる。この単純な前提が、今回のDSS ver.2.0でようやく国の人材基準に反映された。

新設されたのが「データマネジメント」という専門職カテゴリだ。3つの役割で構成される。

「データスチュワード」はデータの品質を守る番人だ。たとえば、社内の顧客データに誤りや重複がないか確認し、管理ルールを定める。「データエンジニア」はデータが組織内をスムーズに流れる仕組みを作る。各部門のシステムからデータを集め、分析できる状態に整えるパイプラインの設計者だ。「データアーキテクト」はデータ活用全体の設計図を描く。どのデータをどこに保管し、誰がどう使うかという構造を組織全体で決める役割を担う。

いずれも、これまでは「AIを作る人」であるデータサイエンティストの職域に混在していた機能だ。それが今回、独立した専門職として切り出された。

AIガバナンスが専門職の必須スキルに

今回の改訂ではもう一つの変化があった。「AIガバナンス」が、デジタル専門職の必須スキルとして初めて明記された。AIガバナンスとは、AIが誤った判断をしていないか確認する仕組みや、誰がどんな基準でAIを使うかを社内で取り決めるルール作りのことだ。たとえば「採用選考にAIを使う場合、どの段階で人が最終判断を下すか」をあらかじめ定めておく、といった実務が想定される。

生成AIが業務に組み込まれる中、その使い方を誰がどう監視・管理するかが問われ始めており、今回の改訂でその対応が専門職の標準スキルとして位置づけられた。刷新されたのはデータ処理の側だけではない。AIで事業そのものを動かす側の役割も、今回書き換えられた。

ビジネスを変える専門職の役割も刷新

「ビジネスアーキテクト」の定義がAX推進の旗振り役へ

改訂前、「ビジネスアーキテクト」という人材像は「IT導入を企画する担当者」として位置づけられていた。ver.2.0ではこの定義が書き換わった。「AIを活用して業務プロセスやビジネスモデルを継続的に変革する役割」として再定義されたかたちだ。AIで組織の動き方そのものを変え続けることが、この職種の中心に置かれた。

先行企業はどう動いているか

新基準の公表に先駆け、DSSに基づいた人材育成に着手している企業がある。

ファミリーマートはDSSをもとに「3つの人材像」を社内で策定し、選抜・育成からDXプロジェクトの実践までを一体で運用する。資生堂インタラクティブビューティーは、DSSのスキル項目をベースにデジタル専門職のスキルマップを策定し、全社横断のリスキリングプログラム「Shiseido+ Digital Academy」を動かす。富士フイルムホールディングスは全グループ約7万人を対象に、DSSに準拠した育成プログラムを運用中だ。

こうした先行事例が積み上がる一方で、デジタル人材育成の成功を実感している企業はわずか2%(DX動向2025)にとどまる。基準が整い、手本となる企業が現れても、人材を育てきれるかどうかは別の問題として残っている。

全社員向けAIスキルの基準も強化、学習支援の整備も始まる

変化は専門職だけにとどまらない。全社員を対象とした「DXリテラシー標準(DSS-L)」も今回あわせて改訂された。改訂前は、デジタル技術の基礎的な理解やデータ活用のマインドセットを中心に構成されていた。今回の改訂で、生成AIの具体的な使い方・リスク・倫理が必須項目として新たに加わった。AIをパートナーとして使うマインドセットが「働く人全員に必要な素養」として明文化されている。

制度面の整備も動き始めている。政府の人材開発支援助成金(最大75%補助)は既存の助成制度だが、ver.2.0に対応した研修プログラムが対象範囲に加わる予定だ。2027年度からは情報処理技術者試験にもDSS 2.0の内容が反映される見込みで、ITパスポートの出題範囲にも変化が生じる。政府が掲げる「デジタル推進人材230万人育成」の中核指針として、新基準は試験や助成金といった実際の制度に組み込まれていく段階に入った。

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