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農水省の分析作業が2か月→3日に、政府専用AI「源内」が動き出した

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農林水産省の職員が2か月かけてきた仕事を、AIが3日で片付けた。政府専用AI「源内」が、中央省庁の日常業務に入り込もうとしている。

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8,000件の分析が3日で終わった

毎年行われる米の作付け意向調査。全国から集まる8,000件を超える回答の集計・分析は、職員1人が約2か月かけてこなす仕事だった。

政府専用AI「源内(げんない)」を使ったところ、3日で終わった。速さに換算すれば約20倍だ。

先行試験運用3か月の成果

デジタル庁はこの農林水産省の実績を、全府省庁への展開を決定する根拠として公表している。先行して検証に参加した職員約1,200人を対象にした試験運用では、3か月間の延べ利用回数が6万5,000回に上り、回答者の約8割が「業務効率化に寄与した」と答えた。こうした積み重ねが、2026年5月から全府省庁の約18万人へ展開する決断を後押しした。

「試しにやってみた」段階は終わった。行政のAI活用が、インフラとして本格的に動き始める転換点がここにある。

名前の「源内」は、生成AI(英語で「GenAI」と略される)と江戸時代の発明家・平賀源内の名を掛け合わせた造語だ。なぜ政府は既存のAIサービスを使わず、専用のAIを作ったのか——次でその理由に入る。

なぜ政府は専用AIを作ったのか

国の仕事には、外に漏らせない情報がある。ChatGPTのような一般向けAIサービスに文章を入力すると、その内容はインターネットを通じて外部のサーバーに送られる。機密情報を含む可能性がある行政文書に、その仕組みをそのまま使うわけにはいかない。

機密情報も扱える閉域環境

源内が動くのは「ガバメントクラウド」と呼ばれる政府専用のサーバー基盤の上だ。インターネットを経由せず、政府が管理するサーバーだけで完結する——この閉じた環境が、行政がAIを安心して使うための前提条件だった。

行政専用アプリが20種類

汎用AIをそのまま導入するわけではない。行政の具体的な業務に合わせた専用アプリが20種類用意されている。

  • 国会議員からの質問への回答文書(国会答弁)の草案を作るアプリ
  • 法律・法令を素早く調べる「Lawsy(ロージー)」
  • 会議の内容を自動で文字起こしするアプリ
  • 外国語文書の翻訳を補助するアプリ
  • 申請書類や通知文書を要約するアプリ

職員が日常的にこなす定型的な文書処理の多くをカバーする構成になっている。

AI作成物は必ず人間が確認する

源内が独断で公文書を完成させ送信することはない。運用ルール上、AIが出力した文章は必ず担当職員が内容を確認・修正してから使う。最終的な判断は常に人間が行う設計になっている。

全府省庁展開で加わるもの

専用AIを安全に動かす環境が整い、試験運用が手応えを示した。2026年5月から始まる全府省庁39機関への展開では、試験運用版にはなかった仕組みが加わる。

官報79年分が検索ソースに

官報とは、法律の制定や国の公式な告知を掲載する政府の公式文書だ。いわば国の公式お知らせ紙にあたる。これまで職員が膨大な文書を手作業でめくって調べていた79年分の官報が、源内から瞬時に検索できるようになる。法令調査の手間は、根本から変わる。

複数のAIを業務に応じて使い分ける

源内は1種類のAIではない。NTTが開発した国産大規模言語モデルを含む複数のモデルを、業務の内容に応じて使い分けられる基盤として設計されている。ソフトバンクなど他の国内企業のAIサービスも採用対象とされているが、具体的な組み合わせの詳細はデジタル庁が順次公表する方針だ。特定の海外AIに依存しない設計の背景には、AIをめぐる技術と判断を自国で持つ「AI主権」という考え方がある。

2026年から自治体にも広がる

霞が関での展開と並行して、地域の役所にも届く準備が進んでいる。総務省は2026年3月、都道府県や市区町村がAIを活用する際の基本的なルールを示した「地方公共団体におけるAI活用ガイドライン」を策定した。源内の自治体展開は、このガイドラインを土台として2026年度から段階的に進む予定だ。住民票の申請手続きや窓口対応など、市民が直接触れる行政サービスへの波及も現実的な射程に入ってきた。具体的な地域や対象業務は2026年度中に順次公表される。

政府は2025年12月の閣議決定に、2030年頃までに業務フローそのものをAI前提で作り直す「AIネイティブ行政」という長期目標を盛り込んだ。農林水産省の分析作業3日短縮から始まったこの変化が、住民の生活にどこまで届くのか——その答えはまだ出ていない。

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